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隣で御馳走をムシャムシャと食べていると、彼が話しかけてきた。ピノは怒った様子でふて腐れていた。
「おや? ピノ、ずいぶんとご馳走を持ってきたな。どこから貰ってきた?」
彼の質問にピノは仏頂面でヘソを曲げて答えた。
「あっち……!」
「ん? どうしたピノ、なんだか不機嫌だな?」
「ほっといてよ…――!」
「コラ、なにヘソを曲げてるんだ?」
ローゼフは不思議そうに首をかしげると、ピノからお皿を取り上げて話しかけた。
「どうしたんだピノ? 言ってみなさい」
「………」
「ん?」
優しく話しかけるとピノは不機嫌になりながら、下を俯いてボソッと小さな声で話し出した。
「ローゼフ踊ってたでしょ……?」
「ああ、彼女に誘われたからな。それが何か問題か?」
「ズルい! ボクもローゼフと一緒に踊りたい!」
「あのなぁ。わがままを言うんじゃない。それに踊ると言っても、私とお前とでは背丈がちがうだろ?」
ピノの不機嫌な理由を知ると呆れた表情で話した。
「いいもん、ボクそれでも……! ローゼフ、一緒に踊ってよ…――!」
ピノは呆れてるローゼフにそう言うと、彼の腕を掴んでグイグイと引っ張った。
「まったく、人形の癖にヤキモチか? そう言う事は大人になってから言いなさい……!」
「ボク子供じゃないもん!」
「ピノ…――?」
ローゼフは不意に目を向けると、ピノは悲しそうに涙ぐんでいた。そして、今にも泣きそうな表情で彼のことをジッと見つめた。
「いいか、ピノ。あれは礼儀作法の一つだ。舞踏会とはそう言うところなんだ。社交界とは言わば上流階級の貴族達の交流場だ。歌に踊りに世間話や、社会情勢や政治についての意見をかわしたりする場でもある。踊りはその一つだよ。私だって好きで踊りたくはないが、この場で踊らなくては怪しまれる。それに女性からの誘いを断れば、あとで叩かれるのは私のほうだ。だからわかってくれピノ…――!」
ローゼフは優しくそう言って説明するとピノの頭を撫でた。すると突然、大きな声を出して言い返した。
『ローゼフのバカぁーっ!!』
「コラ、待ちなさい……!」
ピノは泣きながら言うと、彼の前から走り去って行った。ローゼフは咄嗟にあとを追いかけた。
「コラ! 待ちなさいピノっ!!」
後を追いかけると必死で名前を呼んだ。だが、ピノは立ち止まらずに舞踏会から抜け出すと廊下を泣きながら走った。すると目の前で男性の人にぶつかった。ピノは派手に倒れて地面に尻餅をつくと、男性はそれに気がついた。そして、大きな手を差し出すと軽々と両手で持ち上げた。
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