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「そうか、やはりな。まさかとは思っていたが…――」
「ねぇ、ローゼフどうしたの?」
ピノは心配そうに彼の顔を覗き込んだ。
「では、私の愛がなくなったらお前はどうなる?」
その言葉にピノは驚くと、胸の奥を貫かれた思いに襲われた。そして、小刻みに震えると今にも泣きそうな表情で聞き返した。
「ど、どうしてそんなこと急に言うの? ローゼフはボクのこと飽きちゃったの?」
「何を言っているんだ? 私はただ…――」
「触らないで!」
「ピノ…!?」
『触らないでよ!!』
ピノは瞳から涙が溢れると、唇を震わせながら彼に聞き返した。
「わっ、わかった…――! ローゼフはボクのこと、飽きちゃったんだ! もう好きじゃなくなったんだ! だからそんなこと……!」
「違う、私はただ…!」
彼が言い聞かせようとすると、ピノはいつの間にか大粒の涙を流していた。その表情は深く傷ついた瞳をしていた。ローゼフは知らぬ間に自分がピノを傷つけたことに気がつくと直ぐに謝った。
「すまない。私はお前を傷つけるつもりはなかった。どうか許してくれ、もうこんなことは二度と聞かないから頼む…――!」
ローゼフはそう言って、ピノを自分の腕の中にぎゅっと抱き締めた。ピノは彼の腕の中で大きな声を出して泣きじゃくった。そして、彼は心の中でピノの恐怖を悟った。人形のピノにとって動けなくなる事がどんなに恐ろしく怖いことかを――。ましてや子供のピノにとって、死も恐怖も知るには幼すぎ年頃だった。ローゼフは愛玩ドールの隠された秘密を知ると、酷く困惑した。そして、自分の胸を痛めた。
なんてことだ。私の愛が無くなれば、この子は動けなくなるのか。私はなんて愚かな質問を聞いたんだ。この子にとって私の愛は必要不可欠なのか。ならば、私はピノを…――。
彼は泣きじゃくるピノを優しく抱き締めてあやすと、自分の胸の中に密かな思いを仕舞い込んだ。
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