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翌日、ピノはほっぺたを膨らませて朝からご機嫌ななめだった。ローゼフが名前を呼んでも、ピノは反応する事もなく知らんぷりんして彼の前を通り過ぎた。
「こっちに来なさいピノ、おいで!」
彼がいくら名前を呼んでも、ピノは全く返事をせずに窓の方を見てソッポを向いた。ピノは昨日のことが余程ショックだったのか、彼なりに塞ぎ込んでいる様子だった。
*
ボクはローゼフの愛がなくなったら動けなくなる。動けなくなったらローゼフとも遊べない。一緒に歩けない。一緒に手を繋げれない。一緒に笑えあえない。お喋りもできなくなる。思いも伝わらなくなる。
ローゼフはまた、一人ぼっちになる。そしてボクは感情もなければ、なにもないただの人形の姿に戻ってしまうんだ。
そんなのは嫌だ……!
ボクはもっとローゼフと一緒に…――!
ピノは座り込んだカーペットの上から急に立ち上がるとローゼフの方にバタバタと走って行き、いきなり彼の足下にしがみついてきた。
「どうしたピノ?」
「ローゼフあのね……」
ピノはいいかけた言葉を途中でやめた。
「どうしたんだ?」
「ねえ、お外で遊ぼう!? かくれんぼしようよ? いいでしょ?」
「ああ、いいなそれ。よし、では一緒にかくれんぼをするか?」
「うん!」
「よし、ならパーカスも入れよう。あいつも屋敷に、こもってばっかりで、あまり運動をしてないからな。この機会に運動させてやろう!」
ローゼフはそう言って話すとパーカスを呼んで、庭で3人でかくれんぼを始めた。
「ではローゼフ様、私が鬼をやりましょう」
「あ、ボクがやるボクがやる~!」
ピノは率先して手を上げると、2人はピノに鬼役を譲って隠れた。ピノは地面にしゃがむと、両手で顔を隠して数をかぞえ始めた。
「じゃあ、数えるよー。いーち、にーい、さーん、しーい……」
2人はそれぞれ物陰に隠れると合図を送った。
「もーいーよ」
「よーし、今から見つけに行くぞ~!」
ピノはしゃがみこんだ地面から立ち上がると、さっそく2人を見つけに行った。広大な庭を歩きながら、ピノは2人を探した。しかし、2人とも上手く隠れすぎてピノにはわからなかった。そして、あちこち歩いて2人を探したが、なかなか見つからずピノはその場でグズリ始めた。パーカスはコッソリと物陰から出ると、近くに隠れているローゼフに話しかけた。
「ローゼフ様、どうやらピノがグズリ始めたようですな」
「ああ、もう降参ってところか? そろそろ出てやらないと可哀想だな……」
「そうですね。では、もっと見つけやすい場所に隠れましょう」
「ああ、そうだな――」
2人は意気投合をするとピノの近くへと移動した。その頃、近くで物音がすると茂みから声をかけた。
「あ、ローゼフみーつけた!」
そう言って指をさすと茂みからは、彼の声が返ってこなかった。ピノは不思議そうに首を傾げると、再び茂みに向かって声をかけた。
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