略奪。

2/3

67人が本棚に入れています
本棚に追加
/82ページ
 翌日、ピノはほっぺたを膨らませて朝からご機嫌ななめだった。ローゼフが名前を呼んでも、ピノは反応する事もなく知らんぷりんして彼の前を通り過ぎた。 「こっちに来なさいピノ、おいで!」  彼がいくら名前を呼んでも、ピノは全く返事をせずに窓の方を見てソッポを向いた。ピノは昨日のことが余程ショックだったのか、彼なりに塞ぎ込んでいる様子だった。 *  ボクはローゼフの愛がなくなったら動けなくなる。動けなくなったらローゼフとも遊べない。一緒に歩けない。一緒に手を繋げれない。一緒に笑えあえない。お喋りもできなくなる。思いも伝わらなくなる。  ローゼフはまた、一人ぼっちになる。そしてボクは感情もなければ、なにもないただの人形の姿に戻ってしまうんだ。  そんなのは嫌だ……!  ボクはもっとローゼフと一緒に…――!  ピノは座り込んだカーペットの上から急に立ち上がるとローゼフの方にバタバタと走って行き、いきなり彼の足下にしがみついてきた。 「どうしたピノ?」 「ローゼフあのね……」  ピノはいいかけた言葉を途中でやめた。 「どうしたんだ?」 「ねえ、お外で遊ぼう!? かくれんぼしようよ? いいでしょ?」 「ああ、いいなそれ。よし、では一緒にかくれんぼをするか?」 「うん!」 「よし、ならパーカスも入れよう。あいつも屋敷に、こもってばっかりで、あまり運動をしてないからな。この機会に運動させてやろう!」  ローゼフはそう言って話すとパーカスを呼んで、庭で3人でかくれんぼを始めた。 「ではローゼフ様、私が鬼をやりましょう」 「あ、ボクがやるボクがやる~!」  ピノは率先して手を上げると、2人はピノに鬼役を譲って隠れた。ピノは地面にしゃがむと、両手で顔を隠して数をかぞえ始めた。 「じゃあ、数えるよー。いーち、にーい、さーん、しーい……」  2人はそれぞれ物陰に隠れると合図を送った。 「もーいーよ」 「よーし、今から見つけに行くぞ~!」  ピノはしゃがみこんだ地面から立ち上がると、さっそく2人を見つけに行った。広大な庭を歩きながら、ピノは2人を探した。しかし、2人とも上手く隠れすぎてピノにはわからなかった。そして、あちこち歩いて2人を探したが、なかなか見つからずピノはその場でグズリ始めた。パーカスはコッソリと物陰から出ると、近くに隠れているローゼフに話しかけた。 「ローゼフ様、どうやらピノがグズリ始めたようですな」 「ああ、もう降参ってところか? そろそろ出てやらないと可哀想だな……」 「そうですね。では、もっと見つけやすい場所に隠れましょう」 「ああ、そうだな――」  2人は意気投合をするとピノの近くへと移動した。その頃、近くで物音がすると茂みから声をかけた。 「あ、ローゼフみーつけた!」  そう言って指をさすと茂みからは、彼の声が返ってこなかった。ピノは不思議そうに首を傾げると、再び茂みに向かって声をかけた。
/82ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加