不安感

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不安感

――ピノが拐われそうになったあの事件からローゼフは周りに用心した。ついでに使用人達や、門番達に、屋敷の人の出入りについては警備を厳重にするようにと伝えた。怪しい者がいたら捕まえろ。彼のただ事じゃない雰囲気に周りは恐れると使用人達はお互いに目を光らせて怪しい者がいないかを見回りした。  ローゼフが苛立つ一方で、連れ拐われそうになった本人は普段とは変わらない様子でノンキに積み木遊びをしていた。 「お前は本当に気楽だな。狙われてたんだぞ、少しは驚かないか?」  彼は呆れた様子で椅子の上で頬杖をついた。 「だってだって~! ローゼフ、ピリピリしてるんだもん! ローゼフが怒ってるのはボクのせいでしょ?」 「なっ、何をバカな事を…――!? もういい、積み木遊びなんかしてないであっちに行ってなさい!」 「やだよ~! まだ遊びたい! ねぇ、一緒にお城を作ろう?」 「私は今、一人になりたいのだっ!!」  ローゼフがそう言って怒鳴ると、ピノはションボリした表情で彼の部屋から出て行った。そして、居間で一人でお絵を描きしていると、パーカスが不思議そうに話かけてきた。 「おや、何を描いてるんだねピノ?」 「うんとね、ローゼフとボクだよ!? 見てみて、こっちがローゼフでこっちがボクだよ!」  ピノが描いた絵には2人が幸せそうな笑顔で笑っていた。パーカスはその絵を見ると関心した表情でピノを褒めた。 「ふむ、ピノは絵が上手ですねぇ。それによく描けていますよ?」 「ほ、本当に…――!?」 「ええ、もちろんですとも。この絵を額縁にいれて、飾られてみてはどうでしょうか? ローゼフ様もピノが描いた絵を見たらお喜びになられますよ」 「で、でも……。ローゼフなんか怒ってるんだもん。話しかけたらまたプンプンしてボクに…――」  ピノは落書きを止めると、悲しげな瞳でパーカスにぎゅっと抱きついた。 「――いいですか、ピノ。ローゼフ様は貴方を怪しい者から守ろうとしているのです。だから気を少々立てているだけで、それは問題もありません」 「そ、そうかなぁ……?」 「ええ、そうですとも。それに彼は貴方を必要としています。だから貴方は彼の不安を消し去るくらい、しっかりとしてればいいのですよ」 「ボクにできるかなぁ?」 「ええ、できますとも。貴方は彼の自慢のドールなのですからもっと自信をお持ちにならねなさい」 「うん…――! ありがとう、パーカス!」  ピノはパーカスから勇気づけられると、涙を拭いてニコリと笑った。そして、自分が描いた絵を持ってローゼフに見せに行った。
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