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――数日後、ローゼフはピノの描いた絵を気に入り。絵を額縁に入れて自室の寝室に飾った。彼は、朝早くから服に着替えると外に行く支度をしていた。ピノは眠い目をこすると、彼の寝室に寝巻き姿で現れた。
「ふぁ~あ。ねえ、ローゼフ朝からどこに行くの?」
「なんだ起きてきたのか?」
「うん!」
「まだ朝じゃないから寝てなさい」
彼は鏡の前で袖口のボタンを止めると、一言そういって話した。ピノはキョトンとした顔で不思議そうに彼の事をジッと見つめた。
「ねぇ、朝じゃなかったらローゼフはどこに行くの?」
突然その事を聞かれると、彼は黙ったまま俯いて素っ気なくこたえた。
「ピノには関係ない……」
彼はそう言って答えると、鏡に向かってネクタイを結んだ。ピノはその言葉を聞くと、そこで思わず駄々を言って困らせた。
「やだやだやだ! ボクも一緒に行く! ローゼフと一緒に行きたいよ! ねぇ、いいでしょ!?」
「――ダメだ! 外は危険だ! いい子だから屋敷で大人しくしてなさい。いいね?」
彼は子供をあやすように説得すると、ピノは怒ってほっぺたを膨らませて、目の前でふて腐れた。
「そんな顔してイジケてもダメだ。とにかく私は用事があるのだ。今日はローザンヌ家の所に会いに行く。恐らく帰るのが遅くなるが、なるべく早く帰ってくるからパーカスの言いつけはちゃんと聞くんだぞ。良い子にしてたら、お土産を買ってくる。いいな?」
ローゼフがそう言って一言話すと、ピノがいきなり足下にしがみついてきた。
「やだやだやだ! いかないでローゼフ! お願い、一緒にいてぇ!」
「ピノ…――」
「あっ、あの人に会いに行くんでしょ……?」
「ん? あの人?」
「舞踏会で一緒踊ってたあの人に会いに行くんでしょ……!?」
「ピノ、誰にそのことを…――!?」
ローゼフはピノの口から出た言葉に驚いた。そして思わず動揺した。
「はぐらかさないでよ…――! ボク、お土産なんていらない! お土産なんていらないから傍にいてよ、お願いローゼフ!」
ピノは取り乱すと泣きじゃくって喚いた。そして、その場で彼を困らせた。ローゼフは、ピノのワガママに困り果てると、そこで強めの口調で怒鳴った。
『ワガママを言うんじゃないっつ!!』
ローゼフが不意に手で払いのけると、ピノは後ろにヨロヨロと倒れた。その瞬間、彼はハッとなって我に返った。するとピノが目の前でショックな顔で瞳から涙を浮かべて見つめた。
「ふぇっ…うっうっ……。ローゼフが、ローゼフが…うっうっ…ひっく…うぇええええええーーん!! ローゼフが叩いたぁ! ボクのこと叩いたぁっ!! うわぁああああーーん!!」
ピノが大きな声を出してワンワン泣くと、パーカスが騒ぎを聞きつけて、慌てて部屋に訪れた。
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