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「だから舞踏会にピノを呼んだのか…――?」
「ああ、そうだとも。そうしなければきみは私を屋敷には招待してくれないだろ? アーバンはきみにその子を見せられて本当に驚いていたよ。彼自身もあの人形が本物の愛玩ドールだと言うことは、全くしらなかったからな。私にその子の話をしてた時の顔ときたら、まるでお化けでも見たような顔で驚いていたよ。だから私は舞踏会を開く事を表向きにしてきみにその子を同席させたのだ。そして、なにも知らないきみはその子を舞踏会に連れてきたってわけだ。きみがあの時、私の邪魔さえしなければ、私はその子を拐う気だったのさ」
「なっ、何…――!?」
「本当にきみは私にとっては邪魔な存在でしかない。私のシナリオに踊らされて挙げ句の果てには邪魔までして、本当にきみは目障りだよ!」
オーランドは更なる狂気に溺れると、徐々に本性を見せた。
「あの日、私の屋敷からピノを拐った男はお前の差し金か!?」
「フン、そうだとも……! 私があの者を金で雇ってその子を拐うように命じたのだ! しかし、あの者はその子を拐う事にしくじった! でしゃばりなお前のせいでな…! お前が余計な邪魔をしなければ、あと少しでその子を手に出来たのに…――!」
ピノとローゼフは彼のその言葉に衝撃を受けた。
「ローゼフ……!」
「ピノ…――!」
2人はオーランドの衝撃的な事実を目の前で聞かされると震え上がった。そして、困惑して戸惑った。
「私はお前からどうやってその子を拐おうか考えた。そこで私が考えついたのは、あのローザンヌの手紙だった。まさか本当に手紙に食いつくとは、予想外だった。しかし、お前が屋敷を出たおかげでその子を拐うのに手間がはぶけた。アーバンにその子を外に誘い出すように命じたのは私だ。そしてバカなその子はまんまと彼に騙されてついてきたのだ。そう、すべてはお前に会いたい一心でな…――!」
オーランドはそう話すと、2人の前で可笑しそうに笑いをこみあげた。
「アーバンはお前とその子の関係を知っていた。だから私は彼にその子に揺さぶりをかけるように命じたのだ。お前はその子の不安も何も知らないでローザンヌ家に出向いた。たしかに拐うことはよくないな、だがそんなに大事なドールだったら何故その子の傍にいてやらなかった? 自分にも非があるとはおもわないのかね、ローゼフ君?」
彼は優雅な口調でその事を正すと、ローゼフは唇を噛んで悔しさを込み上げた。
「くっ…――!」
「ローゼフは悪くないよ、ボクが悪いの! アーバンおじさんのはなしを信じたボクが……! ローゼフがボクのマスターでボクだけを好きでいてくれる。それだけで嬉しいのに、ボクはローゼフとあのお姉さんのことでヤキモチ妬いたの…。凄く自分がバカだった。だからごめんなさいローゼフ。ボクがおじさんの話を信じなかったらこんなことには…――」
ピノは心から反省すると瞳から大粒の涙を流した。ローゼフはピノを腕の中でぎゅっと抱き締めると、優しく笑って話しかけた。
「いいさ、それくらい……! お前が私を好きでいてくれる。その気持ちが私はうれしいよ…――」
「ローゼフ……!」
オーランドは2人の深い絆を目の前にすると激しく怒り狂った。
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