激情

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「やめろ! お前は狂ってる! お前みたいな卑劣な奴は愛玩ドールのマスターになる資格はない!」 「フン、生意気な奴だ! なら貴様が死ぬか!?」  オーランドがローゼフに銃口を向けて狙いを定めると、アーバンが物陰から現れた。 「いけませんオーランド公爵! 彼を殺しては誓約が解除されません!」  アーバンがノコノコ現れると、ローゼフはカッとなって怒鳴った。 「アーバンよくも私を裏切ったな…――! 最初から仕組まれていたのを知っていて私にその子を誕生させたのか!?」  彼がその事を尋ねるとアーバンは素の顔で答えた。 「ええ、そうですよローゼフ様。私も彼と同じく確証が欲しかったのです。誰だって真実かどうかを確かめたかったら、その確証がほしいと思いませんか?」 「何っ…!?」 「かの英雄のジャンヌダルグでさえ、本当に処女かを確かめられたんですよ? 人間とはそう言う生き物なんです。だから貴方が愛玩ドールを誕生させた時は、私は死ぬほど驚きました。たしかに貴方様を利用したのは悪いと思ってます。しかし、そうしなければならなかった事実にはかわりません。それにその子は彼の愛玩ドールです。ローゼフ様はオーランド公爵にその子を返さなくてはならないのです――」 「貴様、よくも今までぬけぬけと! この恥知らずが…――!」  ローゼフは激しい怒りに燃え上がった。 「何故、わたしだったのだ! 最初から奪う気だったら何故その子を私に与えた…――!?」  彼が質問するとアーバンはあっさりと答えた。 「いいでしょう、答えてあげます。そんな理由など、簡単なことです。貴方が1人で寂しそうにしていたから私は貴方に玩具を与えてあげただけです」 「何…――!?」 「それに十分、人形遊びは楽しんだでしょ? 彼の言う通り貴方は長年の孤独から立ち直った。それでいいじゃないですか。一体、何がまだ不満なんですか? さあ、その剣でピノを殺して契約を解除するのです」  そう言って話すとローゼフはカッとなった。 『アーバン、貴様まで狂ったかっ!!』  ローゼフは彼から衝撃な話を聞かされると、怒りで拳が震えた。そして、激しい感情を胸に(たぎ)らせた。 「どうやらわからないようなので、私からも貴方様に説明してあげましょう。愛玩ドールは、その者が誕生させた瞬間からマスターとなる権利があるのですよ。当然、自分がその子の生みの親になるのですから何をされても人形はマスターを受け入れなくてはならないのです。それが愛でも、愛じゃなくてもね――」  彼はそう言って話すとローゼフのもとに近づいた。そして、ニコリと笑いながら優雅な素振りで話した。 「誕生させた時点で貴方は愛玩ドールと誓約を交わしたようなものです。一度交わされた誓約は、そのマスターが死に至るまで永遠に交わされます。まさに永遠の「愛」とも言えるでしょう。実に美しい話だと思いませんか?」  ローゼフはその話を聞くと大きな衝撃を受けた。 「何…――!?」 「そしてマスターが死んで初めてドールは、長い呪縛から解放されるのです。しかし、いくら愛玩ドールと言えでも中には自分が気に入らなかったり、愛が覚める者もいるかも知れません。だから愛玩ドールと誓約を解除したい者はあることをするのです。それが魂の慰めの儀式とよばれる。通称「ドール殺しの儀式」でございます」  アーバンは彼にその事を話すと優雅にお辞儀した。ローゼフは衝撃的な話を聞かされるとその場で激しく動揺した。
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