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「なんて愚かなことを…! 自分が愛した人形に何故そんな仕打ちをするのだ!? そんなこと、正気沙汰とは思えない…――!」
彼は愕然となると言葉を失った。
「人形とはいえ、愛玩ドールは生きた人形だ……! 痛みを感じないわけではない! 愛玩ドールは人間となんらかわりはないはずだっ!!」
衝撃的な事実にショックを受けると、彼は悲しみに暮れた。
「しかし、ローゼフ様。そうしなければ人形との誓約は解除されないのです。それが愛玩ドールの宿命なら尚更ですよ」
「なんて愚かなんだ…! 自分を愛した人形にそんな残酷なことができるはずないだろ!? 貴様は私に、それをしろと言うのか!? その刃物でピノの心臓を刺せと言うのかお前はっ!!」
「ローゼフ…――!」
ピノは瞳から涙流すと彼を求めた。アーバンは銀のナイフを彼に渡すと耳元で囁いた。
「いいですか、愛玩ドールは他の者が殺しても誓約は解除されません。マスター自身が、自らの手でやらなければならないのです」
アーバンはナイフを手渡すとオーランドのもとに戻った。
「そうだともローゼフ君。キミも聞き分けができない奴だな。早くその子を殺したまえ、それと一つ言っておいてやる。一度殺せば人形は再び蘇らない。人形を誕生させるのも一度きりだと言っておこう」
彼はそう話すと銃口を向けたままニヤリと笑った。その笑みは僅かに狂気に支配されていた。
「それに私は早く自分のドールが欲しいのだ!」
「何、今なんだと……!?」
「フン、言っただろ。その子を殺して誓約を解除して元の人形の姿に戻すのだ…! でなければ私はいつまでも自分のドールを誕生させれないだろ!」
「それが狙いかオーランド!」
「ああ、そうだとも――! 見るがいい、私の愛するメアリーを!」
オーランドが指を鳴らして合図をするとアーバンは人形が座っている車椅子を後ろから押して、それを彼の前に置いた。オーランドは、人形に被せられていた布を捲り取った。ローゼフは椅子に座らされていた人形を目にすると驚愕した。車椅子には大きなビスクドールの少女が座っていた。その大きさは5歳くらいのピノと同じ背丈だった。彼女は虚ろな瞳でローゼフを見つめた。
「見ろ、これこそが私が求めている「彼女」だ! 私は早くその子を新しく誕生させて、この子の生まれ変わりとなって2人で永遠に愛し合うのだ! それには今の姿のその子が邪魔なんだよ!」
『貴様は歪んでいるっ!!』
ローゼフは一瞬の隙をつくと銀のナイフをオーランドに向けて投げつけた。ナイフが右手をかすめると、彼は銃を地面に落とした。
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