激情

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「クククッ…! さすがローゼフ様だ! その頭の回転の早さには恐れを抱きます。ええ、そうですとも。私は彼に愛玩ドールを自分に譲ってくれと頼みこみ。ワザワザ大金まで出したのに、あの男は私に人形を譲ろうとはしませんでした。それどころか、彼は信じていたのです。魂を失った人形が再び自分に語りかけてくれるといった奇跡をね――。そう、まるでおとぎ話のような奇跡を彼は信じていたのですよ。人形を譲る気がないと感じた私は彼の存在が急に目ざとくなったのです。そして私は考えた。どうすれば彼が私に人形を譲るかを…――!」  アーバンは悪に染まった心をさらけだすと彼の狂気はさらに増した。狂気に満ちながらそう言って話すとオーランドは顔色が急に変わってきた。月が不気味に青白く輝く夜空の下、時計台の塔は一人の男の狂気に支配された。アーバンはピノを自分の腕の中に人質にしたまま優雅に笑うと銃口をローゼフに向けた。 「――私はあの晩、彼の飲んでいるワイングラスに毒を入れたのです。それも強力な猛毒をね、それを一口飲めば、大人の人間一人がたちまち死に至るくらいの猛毒ですよ。何も知らない彼は、それを飲んで死に至りました」  アーバンが自分の口から真実を話し始めると2人の表情は凍りついた。 「彼は途中、苦しそうに喚きだして床の上で虫みたいに必死にもがいていたので。逃げられたらまずいと思った私は、暖炉のわきに置いてあった鉄の棒で彼を後ろから殴りつけて、頭をかち割ってトドメをさしたのです」  アーバンは悪に歪みきった顔でその事をはなすと、何かを思い出すと急に狂ったように突然笑いだした。ローゼフはアーバンの衝撃的な話しに心から震撼すると、人間の歪んだ欲望を垣間見た。愛玩ドールの存在が一人の人間の心を狂気に駆り立てるには容易いことだった。ピノは狂ったアーバンに脅えると、全身を震わせて泣き出した。 「――彼を殺すのに苦労しましたが、私は念願の愛玩ドールを手に入れて喜びました。何せこの人形を売れば相当の値打ちがつきますからね。上手くやればお城だって買えますよ。まさに私にとって彼との出会いは人生で一番ラッキーでした。彼にとって私との出会いは最悪だったかもしれませんけどね……!」 アーバンは目を細めて笑うと、自分の犯した罪を正当化しながら話した。 「彼には悪いですが、死んで自己自得だと思います。愛玩ドールを欲しいと思う人は山ほど沢山いるのに、彼はいつまでもその人形を所持して手放さなかった。ましてや彼にはもう、持っている意味さえ無くなったのに…――! だからバチが当たったんですよ、あの男は殺されて当然です!」  彼の口から語られた真実にオーランドは驚愕すると唖然とした表情で話しかけた。 「待て、アーバン! 私に話した話とは違うぞ――!?」  オーランドのその言葉を皮切りに彼はついに本性をみせた。アーバンは躊躇いもなく、持っていた銃で彼を撃った。その瞬間、凍りつくような戦慄が突如走り抜けた。
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