黒幕

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アーバンはピノを人質にとりながらそこでニヤリと笑った。 「だから貴方達お二人にはもう用はないです。私はこれからは、愛玩ドールを利用したビジネスでお金を稼いでいきます」 「――まず、愛玩ドールを欲しがっている裕福な貴族にこの子を買わせます。そしてある程度その者を満足させたら、その者から人形を取り返してまた売るといったやり方で私はやっていきます。どうですか私の素晴らしいプランは? 名案でしょ?」 そう言って話すと、そこで可笑しそうに笑った。 「貴様は狂っているぞ……! 金にとりつかれた亡者だお前は!」 ローゼフは怒りを込み上げながら彼に反論した。アーバンは鼻で笑うと、彼に向かって銃口を向けた。 「さてと…。随分と秘密をお知りになったようですが貴方もその方と一緒にここで死んで下さい。ある有名な推理小説作家の作品には、こんな素敵なタイトルがあるんですよ。まさにこの場の雰囲気にふさわしい言葉です。〃そして誰もいなくなった〃ってね。真実を知った者は消されるべきなのです。それが、この物語の終りを締めくくるにはふさわしいのですから――」 アーバンはその言葉を皮切りに、引き金を引いてピノの目の前でローゼフを躊躇いもなく撃った。 「いやぁあああっ! ローゼフーッ!!」  その瞬間、ピノは悲痛な声で空に向かって泣き叫んだ。銃弾が放たれるとローゼフは一瞬、自分の死を覚悟した。するとオーランドが、目の前に立ちはだかって彼を庇った。 「オ、オーランド公爵……!?」 咄嗟にオーランドがローゼフを庇うと、再び銃弾が彼を撃ち抜いたのだった。ローゼフは彼の行動に驚いて言葉を失った。 銃弾を二発も受けたオーランドは地面に倒れると体からは大量の血が流れた。ローゼフは、それを目の前に彼が助からない事を直感した。 「ロ、ローゼフ君…。私は…私は間違っていた。私はメアリーを愛したゆえに自分自身をすっかり見失っていた…。私にはメアリーしか、彼女しかいなかった…。だから私は愛玩ドールを使って、本物の彼女と愛しあいたかったのだ……。きみを巻き込んで、本当にすまなかった…。私はきみが羨ましかったんだ…。どうか、どうか私を許してくれ…――」  彼は息絶え絶えになりながら心から謝ると、瞳から一筋の涙を流した。
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