魂の儀式

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「まるで黒魔術みたいだな。本当にこれで大丈夫なのか?」  ローゼフは彼のことを半信半疑に疑っている様子だった。だが、アーバンは淡々と話すと物事を進めた。 「はい大丈夫でございます! さあ、血が乾かないうちに早く人形にキスをするのです!」  商人のその言葉に彼はとっさに慌てて反論した。 「貴様、正気か…――!? この私が、人形にキスをするだと!? そんな馬鹿げたことができるか!!」  ローゼフはそう言って拒否を示した。 「では、このままあきらめるのですね――?」  アーバンは渋っている彼にそう言って問いかけると、ローゼフは急にムキになって言い返した。 「誰が諦めるか! ここまでやったからには、簡単に諦めてたまるか…――!」  そう言ってムキになって言い返すと、恐る恐る人形にキスをした。すると次の瞬間、人形は目映い輝きを一瞬にして放った。 「な、なんだこの蒼白い光は……!?」  目の前で人形が金色に光り輝くと、その不思議な光景に思わず驚愕した。 「伯爵、人形に魂が宿りました! さあ、今のうちに貴方が望む理想のドール像を心の中で描くのです! それは貴方だけのドールです!!」  アーバンはそう言って彼を急かした。 「いきなり何を言っているんだお前……!?」 「さあ、早く心の中で理想のドールを描くのです! でなければ魂の儀式はこのまま失敗に終わります! この儀式が失敗すれば、次にやり直せるのは今から100年後になりますよ!!」 「貴様、そんな大事なことは先に言えっ!!」  ローゼフはアーバンに怒りながら言い返すと、彼に言われるがままに心の中で理想のドール像を描いた。そして、輝きは失われると儀式は終わった。 「おい、終わったのか…――?」 「そのようですね、理想は描きましたか?」  アーバンは彼にそう言って尋ねるとローゼフは一言返事した。 「ああ、一応な。でも人形に変化はないな……」 「もしかしたら人形に変化が起こるのは、明日かも知れませんよ――?」 「ああ、そうだな……」  商人とそう言って会話を終わらすと、さっきの出来事がまだ信じられない様子だった。 「では、わたしはこれで……!」  商人は軽くお辞儀をすると、そそくさと部屋を出て帰って行った。ローゼフは不思議そうな顔で人形を眺めた。 「本当にこれで動くのか……?」  不意にテーブルの上にある人形を手に取ると、彼は疑いながらも鞄の中に戻した――。
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