大好きな兄と私のふたり暮らし②

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夕食を食べながら、私は向かいの席に座るお兄ちゃんに言う。 「あ、そうだ! 私、今週の金曜日、合コンだからちょっと遅くなるよ。お兄ちゃん、晩ご飯どうする? 何か作って冷蔵庫に入れておこうか?」 私がそう言った途端、お兄ちゃんの顔が曇った。 「合コン? 愛香(まなか)、ストーカーまがいの男につきまとわれたの、忘れたのか?」 私は昨年の秋、別れ話を聞き入れてもらえなくて、元カレに家まで押しかけられたことがある。 幸い、お兄ちゃんが家にいて、うまく追い払ってくれたけど。 「男の人みんながみんな、ああだとは限らないでしょ? 今度はきっと大丈夫よ」 私と6歳年上のお兄ちゃんとは血が繋がっていない。 私が6歳の時、私たちの両親は再婚した。 その時、お兄ちゃんは父の連れ子で、私は母の連れ子だった。 その両親は、昨年、父の転勤と共に家を出た。 その代わりに一人暮らしをしていた弁護士のお兄ちゃんが帰ってきたのだ。 お兄ちゃんは私の初恋の人。 だけど、血がつながらなくても、お兄ちゃんはお兄ちゃん。 どんなに望んでも関係が変わることはない。 お兄ちゃんに片思いしながら、お兄ちゃんと同居するのは、かなり切ない。 だから、新しい恋をしようと、友達に誘われた合コンに行くことにしたんだけど…… 「合コンって、何時からどこで?」 お兄ちゃんはまだ気にしている。 「えっとね……」 私はスマホを開いて、友達からのLINEを確認する。 「19時からAccueil(アクィーユ)だって」 お兄ちゃんの手が止まった。 「フレンチレストランで合コン!?」 Accueil(アクィーユ)はカジュアルフレンチのお店。 カジュアルとはいえ、居酒屋のように騒げるお店じゃない。 「なんかね、2階のパーティールーム?でやるんだって。一部屋貸し切りってことかな? お医者さんってお金持ちよね!」 そう、今度の合コン相手はお医者さん。 看護師をしている友達からのお誘い。 「医者だからって信用できるわけじゃないから、油断するなよ」 お兄ちゃんは、まだ眉間にしわを寄せたまま言った。 たかが合コンでそんなに心配しなくても…… 「大丈夫。みんなも一緒だし」 私は、夕食を食べることに専念するふりをして、じっとこちらを見るお兄ちゃんから目を逸らす。 だって、お兄ちゃんに見つめられると、ドキドキしてどうしていいか分かんなくなるんだもん。
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