大好きな兄と私のふたり暮らし②

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金曜日、私は予定通り、合コンに参加する。 「愛香(まなか)ちゃん? かわいい名前だね。俺、柏木 翔太(かしわぎ しょうた)。よろしくね」 隣の男性が自己紹介する。 背はお兄ちゃんより低そう。 でも、お医者さんなんだから、きっとお兄ちゃんと同じくらい頭はいいのよね? 優しそうだし。 どうしても、初対面の男性と出会うと、お兄ちゃんと比べてしまう。 居酒屋でやる合コンと違って、わいわいと大声で騒ぐこともなく、時折ジョークを交えつつも、穏やかに会話が進んでいく。 知的な年上の男性との会話は、お兄ちゃんと話してるような錯覚をもたらす。 こんな風にお兄ちゃんによく似た人なら、好きになれるのかな? そんなことを考えながら、私は尋ねられるままに翔太さんと連絡先を交換した。 そうして、21時を回った頃、 「この後、ダーツでもどう?」 と誘われた。 ダーツ……やったことないなぁ 不安に思っていると、翔太さんは私の顔を覗き込む。 「ダーツ嫌い?」 あ、顔に出てたんだ。 私は慌てて首を振って笑顔を取り繕う。 「いえ、やったことなくて……」 私がそう答えると、翔太さんはにっこりと笑った。 「ああ! だったら、俺が教えるよ。そんなに難しくないから、大丈夫」 優しい笑顔に、不安な気持ちがほぐれていく。 「じゃあ、少しだけ」 私がそう答えると、翔太さんは嬉しそうに目を細める。 「やった! 俺、愛香ちゃんのために頑張るからね」 何を頑張るのか分からないけど、嬉しそうな笑顔を見てると、なんだかいいことをした気になってくる。 そうして、21時半頃、私たちは店を出た。 私たちが連れ立ってダーツバーへ行こうとしたその時、 「愛香!」 突然、声をかけられ、驚いた。 振り向くと、今、出て来た店の入り口の傍にお兄ちゃんが立っている。 「お兄ちゃん!」 私が声を上げると、翔太さんが尋ねる。 「愛香ちゃんのお兄さん?」 「はい」 私がうなずくと、お兄ちゃんが歩み寄って来た。 「今日は愛香がお世話になり、ありがとうございました。さ、愛香、迎えに来たんだ。一緒に帰ろ」 お兄ちゃんは、一同を見回して挨拶すると、私に声をかける。 「え、でも、お兄ちゃん、これから、みんなでダーツに行くって……」 困った私は、お兄ちゃんとみんなとを交互に見比べる。 「愛香は行きたいのか?」 お兄ちゃんにそう尋ねられると、正直、困る。 だって、ダーツがやりたいわけじゃないから。
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