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部活か何かの緑っぽいジャージを上下ともに身につけ、サッカーのスパイクのような青基調の色味に黒いロゴの入った靴を履いていた。ジャージから顔を出す手や足は真っ黒に焼け焦げている。当然のごとく顔面も同じ色を成していた。
リュックなどの持ち物は何もない。部活のトレーニング中だろうか。私はほんの少し首を傾げた。
「いっちゃん?」
「うん」
いっちゃんに会うのは小学生以来だった。体はあのころより数段大きくなり、顔も大人っぽくなっている。すでに風貌は大人の男性だった。
「何でいるの?トレーニング?」
「迎えに来た」
「誰を?」
「莉遠をだよ」
「私?」
「そ、お迎え」
お迎え、と言われて保育園や学童保育のことを思い出した。いっちゃんは保育園だけでなく、学童まで一緒で、我が家もいっちゃんの家もお母さんがお迎えに来ることが多かった。
「もう高校生なんだからお迎えなんかいらないよ」
おかしくなって私が笑うと、いっちゃんは不思議そうに眉を寄せる。
「迷ってると思ったんだけど……違った?」
私はしばらくいっちゃんの真っ黒な顔の真っ黒な瞳を見つめた。目も日に焼けるのだろうか。いっちゃんのチョコレートみたいなつるんとした瞳に高校生の私がてろんと間抜け面で映っている。
「いや……違わない」
私は苦笑いを浮かべた。
「でしょ?一緒に頂上まで行こうよ」
「うん。ありがとう」
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