蜜月旅行

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 この物語の主人公はギリシャ語の教師で、どんな天候でもこうもり傘を持ち、雨天用のオーバーシューズをつけている“用意周到”な人物だ。規律を振りかざす杓子定規な中年男が、新しく赴任してきた同僚教師の姉に惚れる顛末が、失笑せずにはおれない。この皮肉に満ちた作品を読んで俺はツイッターにこう書いた。  ― この主人公のように、全てのことを社会の道徳や規範という“箱”の中に押し込めるやつは必ず周りにいる。そうすることで安心なんだろうな。でも、それじゃあ、社会は発展しない。殻を破れない奴はそこで後退するんだ。洒落もジョークも通じない主人公の恋の行方なんて想像に難くない。最後は棺という“箱”に収まったんだ。安心の極地だろうな。  それに対して、反応してくる奴なんて誰もいなかった。だってチェーホフなんて読まないんだろうし、内容も分からないのに反論なんてできないしな。  そう思って、ただ自己満足の感想を書いていたら、突然コメントがついた。ちょっと驚いた。
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