affection

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 繰り返される宣言の中、少しずつ私達は変わっていった。  千紘は全く家事をしない。食事の支度や掃除は私が引き受ける。 「好きにして構わないから」 その代わりなのか、文句も注文も言わない。部屋は私の好きに模様替えをし、家事はほどほどに手を抜く。  他愛もない会話に、千紘の吐息が聞こえる距離で眠りにつく。  千紘はあれから、二度と「居候」という言葉を口にしなくなった。  たまには本音をぶつけてみるのも正解なのかもしれない。時間を重ねていく中に、千紘の愛情が見えてくる。 「弟夫婦、家を出るかもって」 「え、どうして?」 元々、数年の間借りの予定だったという。 「早く独立しろって、言われてる」 驚いた、てっきりずっと同居していくのだと思っていたから。 「……私の事は? まだ何も言われない?」 「結婚はどっちでも、って答えといたけど」  あぁ、まただ。やっぱり千紘には私は必要ないんだ。いい加減、悲しみを通り越して腹が立つ。 「どっちでも、なの!?」 もう嫌だ、宣言が落ち着いたらこの家を出よう。 「ずっと一緒に暮らす、そう言っといた」 え……! 長い間、溜め込んでいた感情が一瞬にして砕けていく。 「俺は長男だし、家を出るつもりはないから」 真穂はそばにいろよ――  優しい笑みが真っ直ぐに私に向いた。 居場所はちゃんと、ここにあった。 「怒りながら泣くなよ」  千紘、貴方が私を泣かすんだよ。  吐息の聞こえる距離が嬉しい  未来もずっと  千紘が大好きだよ―― 【END】
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