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「メイ子」
「メイちゃん」
生き返ったメイ子に二人は絶句した。
「さあ始めましょう」
金原仙人が号令を掛けた。時間が押し迫っていた。
「わっはっはっはっー」
田之上が黄金バットを演じ始めた。
「後十分です、急がないと」
金原仙人が田之上を急かした。
「助けて~、助けて~、女の子は攫われてしまいました。すると、わっはっはっはっー、空に黄金バットが現れた」
『黄金バット頑張れ』
子供等の大声援、昔に戻ったようだ、田之上が嬉しくて声にならない。
「あんた頑張れ」
メイ子が田之上に声援をおくる。
「田之上、子供等に笑われるぞ」
中村が半べそで叫ぶ。一人の女の子が割箸に絡めた水飴を半分にしてメイ子に差し出した。
『おばちゃんあげる、甘いよ』
メイ子が口に入れた。
「おお甘い、ほっぺがくっ付いちゃうよ、ありがとう」
メイ子が微笑むと女の子は味噌っ歯を出して照れた。
「わっはっはっはっー。黄金バットは今日も行く~」
拍子木が打ち鳴らされた。子供等が川に向けて歩き出した、コロが追い掛ける。ひとりずつ川に消えていく。コロがワンと吠えた。メイ子の顔が肩に落ちた。両手にネンネコだけが残った。
了
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