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………
…
罵倒されながらオフィスでの作業を終え、
客先への挨拶に向かった後…
「お、終わったぁ」
「ほんと無能なのね」
「うっせぇ!!」
客の追求にオドオドする俺を見て
後ろでアイがケラケラ笑っていた。
マジでムカつく。
「…で?この外回りの時間使って
愛ちゃんを探すってわけ?」
「探すってかもう行先わかってるけどな」
「…ふーん」
愛を探し出して謝る、
そうすればこの厄介な幽霊も消える。
あれから高校の友人何人かに連絡をとった。
ほとんどが愛の居場所を知らなかったが、
愛の女友達のうち1人だけが知っていて、
昨日教えてもらった。
『むしろ詩葉くんが知らないと思わなかった』
とその女友達からは言われた。
周りからは喧嘩別れしたって
思われてないんだろうな。
「仕事の合間だなんて…
無能かつサボり魔とか最低ね」
「お前が探せって言ったんだろ!」
「別に強制はしてないわよ?
そうすると私が消えないだけだけど」
「くっ!」
ほんっとうにこいつは!!
愛に会ったら開口一番罵ってやる。
こんな言霊寄越しやがって…!
…あれから久々に愛に会う。
見た目はきっとアイと同じなんだろうけど、
胸の中がワクワクしていた。
自分のくだらない発言で
喧嘩別れのようになってしまったが、
俺はまだ…愛のことが好きだったようだ。
「私見てニヤニヤしないでくんない?
私は愛ちゃんそのものじゃないし、
ひたすらにキモいだけなんだけど」
「…うっせぇな」
よく一緒に帰ったり、家でゲームしたり。
楽しかった記憶や痴話喧嘩。
この2週間、アイはそれを思い出させてくれた。
罵倒を通じてではあったものの。
ここから…愛にきちんと謝って
また昔みたいに戻りたいなと
本気で思うようになっていた。
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