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………
…
「おい!もっと早く走れノロマ!」
「うるさい」
「それでも全力出してるつもり!?」
「うるさい!」
「愛ちゃんに会えないかもしれないんだよ!」
「うっせぇ!!わかってるよ!!」
人目も気にせず、アイの罵倒を強めに返す。
夕刻の住宅街をひた走る。
こんな全力で走ったの何年ぶりだろう。
愛…!頼む…まだ謝ってないんだ…
俺に謝らせてくれ…!
………
…
「…はぁ…はぁ」
ついたのは大学病院。
アパートから走り続けて20分くらい。
途中でタクシー拾えばよかったと気づいた。
荒く息を上げながら
入口の自動ドアをくぐり抜けようとする。
この自動ドアの開く速度ですら煩わしい。
「遅い、玲!」
アイはそんな自動ドアをすり抜けて先に行く。
くそ…こんな時幽霊は便利だな…!
半開きの自動ドアを押し退けるようにして
病院の中に入った。
「…すみません!」
「は、はい」
「玉井 愛梨の病室…!どこですか!?」
俺はそのまま受付で面会の人生を取り付けた。
申請用紙を記入しながら
大家さんに言われたことを思い出していた。
学生の頃からアパートに住んでること。
東京で馴染めず、ずっと独りだったこと。
就職するも酷いブラック企業だったこと。
不規則な生活で2週間前に過労で倒れたこと。
そのせいかストレスで心疾患を患ったこと。
「…っ」
入力するボールペンに力がこもる。
幼馴染と喧嘩別れしたことを悔いていて、
度々大家さんにも話していたこと。
「…愛」
俺は入力を終えると
そのままナースさんに教えてもらった
愛の病室へと向かった。
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