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………
…
引き戸を開ける。
ベッドには愛が眠っていた。
「…愛」
さっきまでそばにいたアイとほぼ同じ姿。
昔見た時より遥かに大人っぽい姿…。
痩せ細ってしまった体。
弱々しいその姿に涙が浮かぶ。
俺はそのまま…守るように手を握る。
「……玲?」
「っ!愛っ!」
うっすらと目を開けて俺の名を呼ぶ愛。
さっきまでアイから同じ声を聞いていたのに、
随分久々に聞いたような気がする。
「…遅いよ…ノロマ」
聞き慣れた罵倒。
昔もこうやってノロマって罵られた。
「愛…ごめん…ごめんな…」
俺はギュッと手を強く握る。
愛はそれに応えるように
弱々しく握り返してくれた。
「…私、長くないんだって。
だから最期に玲に会いたかったんだ…」
「愛…そんな…最期なんて…」
俺はふるふると横に首を振るしかできない。
今…伝えないでいつ伝えるんだ…!
「愛!あの時はごめん…!
離れ離れになるのが嫌で…強がって…
くだらない言葉で傷つけちゃって…!
俺…本当は愛のこと好きなのに…
ごめん…本当にごめん!」
「…私も好きだよ」
額を愛の手の甲に擦り付ける。
あぁ…本当に俺はノロマだ。
今になって…こんな言葉を言うなんて…
「玲に一目会えればそれでよかったんだけど、
やっぱり会わない方がよかったかな…」
「…愛」
「私…昔みたいに…
玲とずっと一緒にいたくなっちゃった…」
愛が一筋、涙を流した。
「愛、俺これから毎日来る。
足りないかもしれないけど…
あの日から今までのこと全部話したい」
「うん」
「最期まで…痴話喧嘩してようよ」
「うん…うんっ!」
俺は愛の手を握って
2人して泣きながら約束をした。
愛と玲の痴話喧嘩を…最期まで…。
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