愛vs玲

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…………… ……… … 1年後。 「よぉ、愛」 俺は花束を花立に差し込みながら、 石碑に向かって話しかけた。 石には『玉井家之墓』と書いてある。 再会してから数ヵ月後に愛はこの世を去った。 もうかなり末期だったらしい。 死ぬほど泣いた。狂うほどに泣いた。 でもその数ヶ月は死ぬほど楽しかった。 昔と同じ、いつも通りの痴話喧嘩。 あいつ弱ってるくせに俺に対する 罵詈雑言のレパートリーが尽きないのなんの…。 「俺やっと会社辞めれたよ。  んで今は…ブラック企業を取り締まる  仕事したくて勉強中」 『玲、勉強苦手じゃん』なんて… そんな声が聞こえた気がした。 「…うっせぇよ」 ボソッと聞こえた気がした言葉に返答する。 「……」 黙って目を瞑る。愛との思い出の数々。 思い出して瞑った目に涙が灯る。 …俺は愛が好きだよ。この先も…ずっと。 「…玲、終わった?」 すると… 聞き慣れた凛とした声が俺の耳に響く。 「…あぁ」 目を開けると…墓石の上に 白い服を着たアイの姿があった。 「…お前、愛の墓石に腰掛けんなよ」 「いいじゃん。私実質愛ちゃんだし」 「屁理屈言うな」 「うっさい、ノロマ」 お前もほんと…口汚く罵るよな。 性格が愛のまんまだからそりゃそうか。 愛は最期、死ぬ間際に言葉を残していった。 『玲とずっと一緒にいたかった』と。 愛がそう口にして息を引き取った瞬間、 眩い光とともに愛そっくりの幽霊が現れた。 「帰ってきちゃった」 そんな言葉と共に…。 ……… … 「ったく、愛のやつ。  最期に消えない言霊残していきやがって…」 「私と一緒で嬉しいくせに」 「罵倒は嬉しくねぇよ」 アイはぴょんっと墓石から降り、 ふわふわと俺の周りを回る。 ここにいるアイは、 愛の『ずっと一緒にいたい』の言霊。 「ま、どんまい!玲は死ぬまで私と一緒だよ」 そう言ってアイは愛と同じように笑った。
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