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「ただいまぁ…」
夜10時前。
コンビニ弁当をぶら下げて
真っ暗な玄関で呟く。
8畳そこそこのアパートで一人暮らし。
誰もいないのにただいまと言ってしまうのは
いったいなんでなんだろうか?
窮屈に首を絞めるネクタイを弛め、
スーツのボタンをはずす。
上京してから早4年。
東京で働いて幸せになる!
と息巻いて出てきたは良いものの、
社会で自分がいかに凡人かわからされた。
幸せになるという大志はどこへやら。
定職にはつけたものの、
社会と会社の歯車の一員として
ブラック企業に飼い慣らされる毎日。
毎日帰りは10時頃だ。
日々が忙しく自身の幸せを考える隙間もない。
東京ってこんなもんかぁと気づいたのは
上京してから2年目のことだった。
「…はぁー」
まじで疲れた。
こんなに疲れてるのに
手取りはほとんど上がらないし、
普通に生きるってつらいな。
楽しかった高校の時に戻りたい…
そういえば…あいつ元気にしてるかな?
暗闇の中、灯りのスイッチを手探りに。
弁当温めて…風呂入って…歯磨いて…
パチッ
そんなことを考えながら電気をつけると…
「遅いっ!」
一人暮らし、彼女なし、友人なしの
俺、詩葉 玲を待っていたのは
同い年くらいの綺麗な女性だった。
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