愛vs玲

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……… … 俺と愛梨は昔から家が隣で 一緒にいることが多かった。 小中高とずっと同じ。 クラスも少ないながらずっと同じ。 そのせいかお互いの性格なんて筒抜け。 互いを『玲』『愛』と呼び合うほどだったが、 ずっと一緒だったからそうなだけで、 その実は痴話喧嘩を繰り返すような仲だった。 でも…そんな俺は愛と過ごす時間が この世で何よりも好きだった。 いつまでたっても素直にはなれなかったけど。 「玲!私が東京行くってのに  なに遅刻してんだよノロマ!」 そんな高校卒業後、 東京の大学に受かった愛梨は 新幹線の駅のホームで俺を罵倒する。 「…そもそも俺が愛を見送る意味もねーだろ」 強がってはいたものの… 最後の別れだと思い、 かなり寂しかったのを覚えている。 「私が一足先に東京に出るから、  きっと僻んでるだろうと思ってね!  私の優越感を満たすために呼んだのよ」 俺も一緒に田舎から東京に出たかったが、 落ちてしまって泣く泣く地元に残ることに。 「タチわりぃなお前…  今に始まったことじゃねーか」 「なんですって?」 「なんだよ!」 こんなやり取りを毎日のように。 すごく…幸せに…。 でも今日はしばらくの別れ。 本当は最後くらい笑い合いたかった。 しかし、大学に落ちたてショックだったのと、 愛と離れると思うとモヤッとしてしまい、 どこか苛立ちのような感情があった。
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