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「ほんとあんたと離れられて清々するわ!
東京の大学生活で幸せ手にしてみせるわ」
「はぁ?」
こっちは少し気落ちしてんのに。
人の気持ちを考えないのは愛の悪いところだ。
その分、行動力はあるのだが。
「愛なんか東京で相手にされるわけねーだろ」
「はぁ?普通にモテるから」
「何言ってんだお前」
この時俺はあまりものを考えてなかった。
今まで一緒にいた愛と離れること、
東京で俺を忘れて元気に過ごすであろうこと、
大学に落ちたこと、
いろんなことがごちゃ混ぜになり…
「お前なんか気も強いし、
目つきは鋭いし、胸も小せぇんだから
東京じゃなんもできねーよ」
「……は?なにそれ」
言ったあとでハッとした。
俺らは痴話喧嘩をたくさんしてきたが、
明確に外見や性格そのものを否定する
発言はしたことがなかった。
愛はいつも通り反論しようとするが、
その表情はどこか寂しそうに見えた。
「ま、まぁ?俺も大卒後はそっちに行って
お前なんかより遥かに幸せになってやるし」
「……」
沈黙を誤魔化すように矢継ぎ早に言葉を紡ぐ。
違うこんなこと言いたかったんじゃなくて…
最後の別れくらいは…
「…じゃあね」
「あ…愛!」
そんな俺を見て愛は愛想を尽かしたように
新幹線の車内へ入っていってしまった。
その後すぐに発車のベルが鳴り、
新幹線が走り始める。
俺は小さくなる新幹線を
長いことホームから見つめていた。
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