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助けたい
敬太は保健室の戸棚で手当てする器具を見ている
「先生留守なのかな?」
手当をする器具を集め終わると敬太は椅子に座る
向かい側に椅子を設置すると琴葉は手当をする準備をしている
琴葉は手当の道具を机に並べると、傷で滲んだ箇所を丁寧に消毒してテープを貼っていく
傷を手当する渾身的な琴葉を眺める
「本当にアイツ《天城》と結婚をしたの?」
琴葉は作業をしながら静かに頷く
「琴ちゃんは、それでいいのか?」
敬太は静かに質問を続けた
琴葉は作業をしながら静かに頷く
「アイツ《天城》が好きなのか?」
敬太の顔が忿怒の表情に変わり、琴葉の手が止まり震える
「はっきり言ってくれ」
敬太は悲しい表情で怒鳴りつけるように叫んだ
思わず琴葉は椅子から身を引き、部屋を出ようとした
「まだ話は終わってない!」
敬太は琴葉の腕を掴み、嫌がる彼女を近くのベットに押し倒した
無理やり胸をはだける位置までシャツのボタンを外す
「いや!辞めてお願い…」
「辞めない!ずっと…側で見守っていれば、いつか琴ちゃんと結婚できると思っていた、それなのに…」
琴葉の唇をなぞりながら敬太の瞳から涙が溢れる
「ごめんなさい…敬太」
琴葉は抵抗もせず絶望に似た瞳で敬太を見つめる
「アイツは人間じゃない…、助けたいんだ、、琴ちゃん」
わかっている、、今の彼は人間ではない
理由は定かではないけど彼はかつて人ではあったと思う
人間だった頃の彼は金色の髪に蒼い瞳…、どこかの高貴な生まれの青年だった風貌に見える
あの姿を見たとき、人の温もりがあるどこか懐かしい愛しい気持ちに少しも曇りがなかった
敬太ははだけた胸のボタンを掛け直す
「悪い、乱暴なことをして、、…でも僕は諦めないから」
彼は頭を下げて謝った後、いつもの優しい敬太の表情に変わる
琴葉は言葉に詰まり何も告げず部屋を出る
優しい幼馴染が一瞬別の人のように見えた
美月と同じ熱い眼差しで見る敬太
事故で美月に命を救われた時から敬太との関係が変わっていくのを感じる
保健室から出ると、美月が扉の前で下を向き腕を組みながら待っている
あのまま敬太に襲われたら即座に助けるつもりだったのだろう
「帰ろう…」
気持ちをひたすら押し殺し続け、彼の瞳は紅く染まっていた
美月は琴葉に向かって手を差し伸べる
彼は人間ではないが、時折琴葉に向ける眼差しは金色の髪を持つ青年と同じ表情をする
あの表情をされると恋しいと思ってしまう
「うん」
手を繋ぐと美月は彼女を優しく胸の中に引き寄せる
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