溺れていくような闇に似た情愛

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溺れていくような闇に似た情愛

「琴ちゃん… 僕はずっと見守っていたけど、アイツが現れて焦って… ごめん」 敬太は冷静な物腰でもない、一瞬でも目を逸らしたら多分キスをするだろうな…と言う逼迫した空気 あの視線を感じる 近くに美月が居る ずっと見ている 知っている 出会う前から…敬太と出会う前から、ずっと感じていた視線 本能的に美月と目があった瞬間から底が見えない深い感情を感じてた 「敬太は家族のように想っているよ…ありがとう」 琴葉は言葉を探すように敬太に伝える 敬太の掴む腕から緊張が伝わる もっと言いたいことあるときにする癖 幼稚園の頃から変わってない 人らしい感情を敬太は教えてくれた 兄のような見守る眼差しは暖かい日差しの優しさで心地よかった 彼の想いにたくさん救われ癒された しかし、深い想いとは違う 身体に荊棘が絡みつき、無理に解こうとすると棘が皮膚に食い込み傷口から血が溢れ出し動けなくなるような狂気な感情 血に契約以前から 溺れていくような底が見えない情愛 混乱している頭に浮かんだのは 金色の髪と美しい蒼い眼差し 湖の畔で彼が何かを囁く 途端、胸が熱くて苦しい 美月なの? 「…琴ちゃん」 敬太は彼女の腕をはなした 「ごめんなさい…分からないの」 琴葉は敬太を離れ走り出す 違う、違う…血が欲しいだけよ 涙が溢れて止まらない 血が欲しい 彼が欲しいわけじゃない 涙は拭っても拭っても止まらない 違う… 違う… 水に浮かぶ月のように想いが暴走して掴み取れない 何処まで走り抜けたのか息が切れと共に立ち止まる 琴葉は無意識のうちに美月の前に立っていた 「生まれ変わって記憶を無くそうが関係ない、俺はお前を覚えて居るからお互いに迷子になるわけがない」 ゆっくり手を差し伸べる美月 彼の微笑みは天使のように見える 闇色の黒髪に染まった紅い瞳でも彼が人間だった時に愛してくれた深い想いだけは血に受け継がれていた 「死を受け入れたお前の血は格別に美味だった、、味わいたい」 美月は自らの舌を傷つけると口の中が血で溢れ出し、琴葉を誘う 「美月…お願い……っで…」 彼女は欲したように彼に縋り付き唇を重なり合わせる 1757312c-b88f-4a53-a472-ce8a62af91d5 お互いの血を啜るように絡めあった お願い…揺さぶって壊して 美月の腕の中で琴葉は何度も心の中で叫んでいた
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