血の儀式

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血の儀式

彼は琴葉の指をくわえる 「死に逝くお前も綺麗だ、、俺のモノにして全て奪い尽くしたい」 すでに彼は美しい顔をした野獣となっていたd6a41cba-9314-4a20-a09e-10e400a1dd9b 黒髪から金髪に変わり、 薄グレーの青みかかった瞳が 血に沸るような紅い色に変わる 彼の周りからは 歪な人の形をした蝙蝠の黒翼を纏う黒い塊が 薄墨の空に重くのしかかるように群がる蝙蝠の大群になっていく 奇妙な光景だ ここは地獄なの? 足元に青白い炎の五芒星とインセンスキャンドルが光る 「東の監視人の名において、われ東の門をひらかれん」 手首を嚙む 嚙みちぎる腕から滝のように血が流れる その血を口移しで琴葉に飲ませる 「今死なれては困る、我が花嫁よ」 闇に覆われ、空は荒れ狂い 亡者のような醜い顔をした蝙蝠の羽を持つ生き物が大群が空に舞う 周りとは似つかわしい美しい彼に抱かれている 「あなたは一体誰?」 体が徐々に氷のように冷えてくる中で、声を振り絞りながら琴葉は聞く 「我が名は…」 空から大きく雷が落ち、地を轟かせる 「悪魔なの?」 虚ろな意識の中で彼を見つめる 彼の気配が消え、口元には大きく伸びた牙のような犬歯と太々しい崇高に満ちた表情に変わる 「神の愛児よ、人間たちの間では悪魔と囁かれているが、我はかつて神の眷属であった天使の一人に過ぎない」 背中には大きな蝙蝠の黒翼が顔を出す 「古の争いが我を奈落の底に投げ飛ばされ、業火に焼かれ白い翼は醜悪に満ちた黒い翼に変わった」 情熱的に見つめる紅い瞳は悲しいほど美しい 「我の血で、、永遠に、契約は果たされた」 琴葉を包み込むように抱きしめながら 彼と舌を絡ませるような情熱的な口づけをする 口から彼の血が溢れ流れてくる 飲んでも飲んでも 足りない 満足できない この血を味わうためなら どんな犠牲を厭わない まるで禁断の果実を口にしたような甘美な味を貪るように飲み干す 心の中では人としての 正常な気持ちを保とうと律しているがその圧倒的な誘惑に怯えていた 「この魔方陣(扉)を閉じん、永遠に定められし汝のすみかへ帰るべし」 彼に唱詠が終了の間際に琴葉の耳元に唇を寄せる 周りの景色が闇に飲み込まれ、彼の瞳の色が紅い色から薄グレーの青みかかった瞳に変化する 「お前はもう二度と失うわけにいかない」 強く抱きしめられると同時に琴葉の意識も遠くなる
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