おむかえの儀式

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「く、苦しい」  頭が割れるような痛みにたまらず声が漏れた。おまけに胃袋までもキリキリと締めつけられるような感覚に襲われる。状態はますます悪化の一途をたどる一方だ。この不快感と争いをとめる方法はもう一つしかない。  私は布団から這いずりでて、よたよたとキッチンへと向かう。冷蔵庫を開けると、運よくちょうど一本残っていた。  震える手でそれをとり、プルタブに指をかける。 「だめええええええええ」 「ひゅうーっ。最高だ。おまえにはそれしかねえ」  天使は悲壮な声を、悪魔は歓喜の声をそれぞれあげた。  プシュッ。景気のいい音が、キッチンに響く。 「クゥゥゥ! キンキンに冷えてやがる」  私は缶ビールを一気に飲み干し、思わずひとりごちる。たちまち頭痛は消え、胃の不快感もなくなり、天使と悪魔の声も聞こえなくなった。  やっぱり二日酔いには、むかえ酒が一番だ。
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