三 ホアン

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市の資料館に行き、その場所についての歴史を調べた。映画館は解体されたが、歴史的に貴重な品も多くあったということで骨董品として売られたものも多くあると書かれてあった。そしてとあるアンティ―クショップの商品リストに臙脂色のペアシートを見つけた。 * 「売れなくて困っていたんだ」 店主は好きに試していい、と店の奥に引っ込んだ。 「座ってみたいの、いい?」 「…ああ」 傍目からすれば何気ない会話に見えるだろうけれど、それはホアンとの別れを意味するものかもしれなかった。ホアンは哀しげな顔をして、私を抱き寄せ囁いた。 「僕は君をとても大切に想っていた」 「ありがとう、ホアン。感謝してもしきれないよ。家族のように受け入れてくれて、ありがとう」 その言葉には答えずにホアンは嗚咽を漏らした。 何も言えなくて彼からそっと離れた。
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