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「過去はどうだった?」
「こき使われたよ」
「え?」
「俺が行った過去ではまだあの映画館は出来たばかりでさ、ペアシートなんてなかったんだ」
「え、じゃ、どうしてここにこれが…」
「作ったんだ。あのばあちゃんがまだ若くて俺の事信じてくれなくてさ、働いてくれたら給金代わりに設置してあげるって言われて毎日働いた。一年過ぎてようやく設置してもらえて、一緒にシートに座ってくれたんだ」
「もしかして…一緒に暮らしたり?」
「ああ。いろいろ身の回りのことはしてくれたけど、なんか姉ちゃんみたいな感じだよ。あれ…俺、何で今、想い出したんだ?ずっともやもやして今まで思い出せなかったのに」
私がホアンと過ごした一年みたいだったんだろうなと想像した。
だから、あの時、あのおばあちゃん、懐かしそうに敦史を見ていたんだ。恋する乙女が好きな人を見るかのような目をして。
あの人はやっぱり魔法使いかもしれない。
私達の愛を試そうとしても、だめだよ。
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