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抗議するように目線を上げて睨んだら、涼やかな短いスポーツ刈りの襟足を掻きながら敦史は悪かったと謝る。示し合わせた訳でもないのに、白いシャツに同じペアスニーカーを履いているのが嬉しかったから、今度は連絡入れてよね、と軽く胸を小突いた。
「昨日、手当が入ったんだ。今日は新菜の行きたいとこどこでも付き合うし奢る。だから許して、な?」
敦史は爽やかな笑みで私の手を取る。しょうがないなぁと拗ねるように腕に凭れると彼は目を細めて今度は照れくさそうに目を逸らした。
少しの喧嘩の後に歩き出した京の街は市内のいたるところへ観光客を運ぶタクシーやバスで賑やかだ。目的地まで電車に乗る。郊外に近づくに連れて木々は赤や黄色の葉を色濃くし、秋風に揺られていた。
電車を降りて道を歩く。同じスニーカーで落ち葉をかきわけて進む音が耳に楽しい。
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