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二 ふしぎなデート
「シアター・ロマンチカ…?」
敦史は不思議そうにそんな名前を冠した館を見つめている。観光客でにぎわう嵯峨野の美しい竹林の道から少し離れた静かな路をさらに奥の路へと入った小さな単館の映画館に、私は彼を連れて来ていた。
「閉館なんだって、今日の十九時で。映画半額、ドリンク一杯サービスになるみたいだからから入ってみよ?」
宮大工見習いである彼のお給料はそれほど高くはない。一人前の仕事を任せてもらえるようになるまでにはゆうに十年はかかって、敦史の仕事は主に裏方に回る雑用がほとんどを占めていた。住み込みで働く大工さん達のご飯や身の回りの世話もその仕事のうちで朝は四時から夜は一時頃まで彼は忙しく働いていた。
そんな彼の負担にならないようにと、デートの行き先はいつも私が調べていた。住んでいる京都近郊でリーズナブルに楽しめるデートスポットを毎回ピックアップしているから、そういう観光ガイドとか案外務まるかもしれない。
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