二 ふしぎなデート

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「来た事、あったの?」 「いや、初めてだ」 不思議そうな私達をその人はじっと見て言った。 「うちには特別なペアシートがありましてね、そこに座って映画を観た男女は幸せになれるかもしれませんよ?」 そう言ってその人は意味ありげに笑むと、竹箒を傍らの壁に立てかけ、「入場券売り場」と書かれた席によいしょと座った。 「何をぼっとしてますの。上映が始まりますよ。映画は一つの人生、見逃したら後戻りはできない」 まるで童話の中の魔法使いの様なその人は私達にチケットを売ると、黒革の重厚な扉をぎいっと開けてくれた。
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