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なんてことだ、船底に穴が開いている。全身が恐怖で総毛立つ。
急いでバケツを取り、水をかき出す。だが追いつかない。修理も不可能だ。このままでは、三十分ともたない。
私は無線で救援を要請する信号を出す。だが望みは薄い。
ここで終わるのか……私は死を覚悟する。大自然の前では人間の命など、なんてあっけないものか。
そのときだった。私の目が、救いの神を捕らえた。
船だ。その船影は、ごく近くに見えた。何十人が乗れそうな、大きな船舶だ。恐らく近くを航行中だった船だろう。
この広い太平洋で……。私は畏怖の念に打たれる。偶然というより、奇跡と呼んでいい。
助かった。私は助かったのだ。
私は私を迎えにくるその船を、感謝の心にしびれながら見守った。
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