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授業が終わった。今日は文芸部の活動もないし、委員会もないしのんびりしようかなって思っていたら、あの手紙のこと思いだした。
ポケットから取り出してゴミ箱に捨てた。約束を破るのは申し訳ないし行くしかないか。あっちが勝手に取り付けた約束であっても。
体育館裏へと回った。足の運びが重くて相手を待たせたかもしれない。
まどうでもいいか。でも体育館裏の日向には朝顔が咲き誇っていて、案外センスいいのかと相手の評価を見直した。
でもその場にあいつは来ていなかった。女の子待たせるなんて礼儀にかなってない。仕方ないからその場で文庫本を開いて読み始めた。ちょうど軒下のあたりは日陰になっていて気持ちいい。
体育館では今日も練習している運動部の声が響き渡り、目の前にあるプールでは水泳部がはしゃいでいた。なら私も部活動しようかな。原稿用紙とシャーペンを取り出してカチカチと2回押す。さて、書くか。もうここに呼び出したやつなんて気にならなくなっていた。
「なあお前相手ラブレターで呼び出したんだよな。」
「うん。そうだけど」
「ならすっぽ抜かされても答えた様子がないのはどうしてなんだ?」
「そんなこと知るわけあるか。でもモテ男の結城が書いたのにな。」
「まさか全く興味がなかったとか。そんなわけ無いか。」
彼女を屋上から観察していた男どもは戸惑ったように声を上げた。
そこで結城が声を上げた。
「そういえばなんでこんなことしてるんだ?」
「知らなかったのかお前だいぶとのんきなだな。」
そこから先はそこにいる男たちが先を争うように教えてきた。
きれいな容姿だが、全然心はきれいじゃないとかそんな悪口めいたものもあったが。
要約すると、
告白すると「本は好きですか」「私のために人を殺せますか」
と2つの質問をされる。ただ2番めの質問はどのように答えても、振られてしまう。はいと答えたら冗談で言ったことなのにそんなふうに言うなんて怖いと断られる。その場合は傷口のほうがまだまし。しかしいいえと答えるとけなされて傷口をえぐられてしまうのだ。
なるほどコイツラは全員振られたやつってわけか。
「へえ面白そうじゃん。行ってみるか。」
「結城話聞いてたのか?」
「だから面白そうだなって。」
「分かった物好きにはもう何も言わない。」
「そうか?」
そして結城は屋上の階段を駆け下りていった。
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