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「どうしてこんな事になっちゃったんだろ…… 」
高代真美の目から悲しみの涙が零れ落ちる。
「お願いだから、離れて」
懇願するも離れる事はなく、
「離れてよ! 」
拒否を叫べば叫ぶほど、より一層密着度が強まる。
その状況は高代真美の悲しみを吹き飛ばし、
「もう…… いいわ」
諦めの言葉と同時に、怒りが沸々と湧き上がる。
「思い通りにならないなら…… 」
利き手じゃない左手で背後にある棚の引き出しを開け、
「これでもう終わらせてあげる」
中からカッターナイフを取り出した。
左手指でしっかりと握り締め、親指をスライダーに掛け、
キリキリキリ……
隠れている刃を引き出す。
現れた刃は蛍光灯に照らされて光り輝き、その鋭さはどんな物でも切り裂く表情をしている。
高代真美は、最後の情けをかける。
「離れるなら今のうちよ」
だが、その言葉は届かない。
引き離そうとすればするほど、それ以上の力で引き寄せられ、
「痛い、痛いっ…… 」
痛覚によって高代真美の怒りが頂点に達する。
「もういいっ!
もう許さない!」
カッターナイフの刃が突き刺さる。
想像していたほど、肌に突き刺さる柔らかい感触を感じない。
この事は高代真美の震えていた左手に力を与え、
「もうこれでお終いっ!
元に戻る事はもうないわっ! 」
離れることが終焉だ、と迷いなく一気に引き裂いた。
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