卒業の日、希望咲く

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 毎日のように補助してくれた若い駅員の言葉に、豊島はため息交じりに告げる。 「俺は、手のかかる子ほどかわいいってやつ」  高崎の言葉に呆れる豊島の目の前で、ドアが閉まる。驚く豊島をよそに、閉まったドアの向こうでは、乗務員に指示を出すでもなく駅員が苦笑している。 「あーあ、先生がとやかく言ってる間に閉まっちゃったじゃん」  ともに車両に乗り込んできた高崎に、豊島は声を荒げた。 「高崎!」 「あー、はいはい。次の駅で降りますよ」 「ったく、おまえは最後まで……」  豊島はため息をついた。けれども彼は知っている。不良のような恰好をしていても、高崎は優しい奴だと。こうやって車いすを補助してくれたのも、一度や二度ではない。高崎とここまで話すようになったのも、補助してくれたことがきっかけだった。それまでの豊島は高崎にとって、うるさい教師の一人でしかなかった……いや、今でもそうだろうが。  電車が動き出し、駅員に会釈する豊島の隣で、高崎も軽く頭を下げるのを風の動きで感じる。顔をあげて高崎を見る。
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