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就職試験に落ちて、唯一受かったのが教員採用試験だったんだよ。ほかの生徒だったら、そういってごまかしていた。けれど高崎のまっすぐな目はごまかせない。いや、ごまかしたくない。
一息吐いて、高崎を見る。若い前園先生が、豊島先生を見るときの高崎の目は違うと言っていたのを思い出す。
『私たちだと威嚇されるんです。豊島先生には懐いているというか、一昔前の頑固なお父さんと息子って感じなんですよ。反抗しつつも、慕っているんですよね』
高崎の茶色がかった瞳は、ただ純粋に答えを知りたい子供と同じだ。幼少期に「どうして?」と聞けず、成長してから聞ける相手を見つけた大きな子供だ。それは、かつての豊島と同じだ。
「俺のうちは貧乏だったんだよ。親父が借金と女作って出て行って、おふくろは朝早くから夜遅くまで働き詰めでな。兄貴は優秀だけど、俺は勉強がわかんないしよ、少しでも生活を助けたかったから小学校にも行かないで、ばあちゃんと畑仕事してたんだな」
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