卒業の日、希望咲く

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 今思い出しても恥ずかしい。雨が降れば雨が降る理由を聞き、夕方になればどうして夜がくるのかと、質問ばかりしていた。それもこれも、先生が自分を構ってくれるのが嬉しかったからだ。今みたいにネットでなんでも調べられる時代じゃなかったあの頃、先生もわからないことは調べて教えてくれた。時に一緒に図書館で調べた時間も、豊島にとっては少年時代の淡い初恋の思い出だ。 「そんなこんなで先生になったんだ?」 「そんなこんなって、俺の人生を一言でまとめるなよ」  肘を伸ばして高崎の腰のあたりをつつく真似をする。  ひひっと笑って体をくねらせる高崎に、自然と豊島の頬も緩む。こいつにこんな顔をさせることができてよかった。
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