卒業の日、希望咲く

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 高校に入学したばかりの高崎は誰かれ構わず切り付けそうな目で、肩で風を切って歩いていた。ほかの教員が高崎を腫れ物扱いする中、豊島だけは何度も高崎とぶつかった。怒鳴りあって、ほかの教員が仲裁に入ったことも一度や二度ではないし、豊島自身が校長に腫れ物に触るなというニュアンスの言葉を投げられたこともある。それでも何度もぶつかって、時に褒め、一緒に喜んだ日々の積み重ねが生徒の笑顔につながるから、何度だってぶつかってやれた。 「要は先生の女バージョンみたいな先生に出会った、ってことだろ。先生と違って若くて美人で優しいっていう」 「性格の悪い鬼瓦のジジイで悪かったな」 「やー、褒めてんだって。俺みたいなのを扱いこなせんのは豊島だけだって。綾っちが言ってたぜー、豊島先生は優しいって」  豊島くんは優しいから、その先生は後になって母に言ったそうだ。勉強が苦手な子は理解できるようになれば自信がついて、みんなの力になれます。わからない子の気持ちがわかるから。  教師になってつまずきそうになるたび、先生の言葉に支えられてきた。自分の人生を変えてくれた、先生のようになりたいと。 「おだてても何も出ないぞ」
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