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包まれる、シトラスの混じる蜂蜜のような香りに相まった理紫の匂いと、程良く筋肉の付いた胸板の鞣し革の様な手触りに、鼓動はどんどん速くなる。
身体の芯が、きゅんと切なく絞られる感覚をもて余して、もぞ……と腿の内側を擦り合わせると、「閉じたら、駄目だよ」とキスの間に囁かれた。
更に速くなった鼓動は、全身を心臓にしてしまったみたいだ。
慣れようって言われた。でも、どうやったら慣れるっていうんだろう。
理紫が指の背で脚の付け根に触れる。決して無理にはせず、自分から開くように促す動きに、海月はずるいと思う。
いっそのこと、無理矢理に暴いてくれればこんなに恥ずかしくないのに。
上回るもどかしさに少しだけ力を緩めれば、合わさった口唇から、くすっと笑い声が漏れた気がした。
ちゅっと最後に啄んで、口唇が離れる。
「仕方がないからお願いしてあげる。……ね、全部見せて? 」
ゾクリとする甘い声に、逆らえない。
けれど、言われるがままに少しだけ足を開いたら、呆れた様に「全然見えないよ 」と笑われてしまった。
でも……。
「む、り…… 」
これ以上は、無理……。
「何でもするって、教えて欲しいって言ったくせに、もう限界? 」
「だって…… 」
「海月が教えて欲しいと言ったことをするには必要なことなのにね。無理ならやめる? 」
『教えて欲しい 』の意味が『して欲しい 』に意図的に変えられてしまっていることなど、いっぱいいっぱいの海月には気付けない。
ただ、《やめる? 》と言われたことへのショックで、立てた膝裏にさりげなく持っていかれた自分の手にグッと力が籠った。
「やめ、ない…… 」
もう、限界なんてとっくに突破している。恥ずかしさの余り死んでしまいそうだ。
だけど……。
海月は自分すら知らない、見たこともない場所を大好きな男の眼下に晒す。
数秒が何分にも感じる。身体中を真っ赤に染めて、こんな格好をいつまですればいいのかと思った時だった。
「まだなの? 」
「え……? 」
「ちゃんと自分で開いて、全部見せてよ 」
言われた言葉に海月は自分の耳を疑った。だって、これ以上があるなんて思わなかった。これ以上、何をすればいいのか分からない。
「仕方ないなぁ 」と言いながら、理紫が海月の両膝を押さえて、更に足を広げる。
「……っ?! 」
「何、驚いた顔してんの? 海月が待たせるから手伝ってあげたんでしょ? 」
「や、恥ずかしい、理紫…… 」
閉じようとしても、押さえる手はビクともしない。
「分かってないみたいだから、海月にも分かるように教えてあげようか 」
そして、続けられた言葉はもっと海月の頭の中を真っ白にした。
「俺がしっかりと押さえててあげるから、自分の指で広げて、俺に奥までしっかり見せて 」
「そ、そんなこと……っ 」
「出来るよ 」
太腿の内側に音を立ててキスされる。
理紫の視線を間近に感じ、海月は自分の奥からトロリと蜜が滴る感覚に身震いする。
すると気付いた理紫に、「やぁらしー 」と揶揄われて、遂に海月は泣き出した。
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