『そこには?』4:テレビ(ホラー)

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私は逃げるように走っていた。 バス停までの歩道を、猛然に駆けて行った。 その横を、普段よりも遅いバスが、追い抜いていった。 「クソ!」 私は、ゴール直前の駅伝ランナーさながらに、必死の形相でラストスパートをかけた。 絶対に、次のバスには乗ってやるぞ!――という思いだった。 そして、到着したバスに、猛ダッシュの末、突き刺さるように乗り込んだ。 バスの車内は、予想以上に混みあっていた。 私は入り口付近のの吊り革をつかみ、時おり咳きこみながら、荒れた呼吸を整えていた。 が、ふと不穏な気配を感じ、周囲に目を向けた。 そこには何故か、乗客たちの、敵意に満ちた視線があった。 (しまった、バレたか?!) 私は仕方なく停止ボタンを押すと、乗客をかき分けて出口まで急いだ。 やがてバスが停留所に止まると、私は逃げるように下車した。 「こうなりぁ仕方ない。徒歩で行こう」 私は実は、とんでもない悪い事をしたのだ。 何人もの人を殺した。 とにかく、この街を出なければ‥‥と思い、必死で逃げてきたのだ。 それが、どうにか上手くいき、私が、ホッとしたのは、予定していた廃屋に到着した時だった。 しかし油断はできない。 とにかく、この国から逃げる事が先決だった。 そのため船で脱出することにした。 その船は、N港ちかくの海岸で乗る予定になっていた。 しかし夕方になると、パトカーの走る姿をよく見るようになった。 仕方なく私は、廃屋を出て山に逃げ込んだ。 この山の向こうが、N港だったからだ。 木々の間を通り‥‥ 道なき道を進み‥‥ ようやく坂道に出た。 しかし、反動がついていたため、その坂道を走るように逃げた。 すると前方に何か四角い物があった。 やがて、それはテレビであることが分かった。 大型の液晶テレビだった。 「何故、こんな所にテレビが?!」 私が近付くと、突然、画面が映った。 それは、不気味なシーンだった。 私は直前まで行くと、不意に石にけつまずき、頭からテレビの画面に突っ込んだ。 すると、私の体はテレビの映像に入ってしまった。 私が真っ暗な空中を飛んで行くと、またテレビがあった。 その画面に映っていたのは、刑務所のオリだった。 私は、やはりその画面に突っ込み、そのままオリに突っ込んだ。 すると横にいた男が、 「ほい、捕まえた」 私は、そのままの勢いで、更に奥へ向かった。 すると闇の中に、板が見えてきた。 その板には大きな穴が開いていて、横にいた男が私を捕まえ、その穴に私の首を突っ込んだ。 すると、その男が、 「ほい、死刑」 そう、それはギロチンだったのだ。 私は、首が固定されたまま、 「おいおい、日本は違うハズ‥‥」 その直後、上から刃が落ちてきて、私の首は‥‥落ちた。 ――おしまい――
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