越境

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 利用者同士も顔見知りであり、近くの集落でも僕の評判は良かったと聞きました。  そんな感じでおばあちゃんを一人後部座席に乗せ、僕は他愛もない話をしながら車を進めます。タクシーよりもかなり利用料が安いのですが、それだけがうちを選ぶポイントではないだろうと思っていました。孫世代との会話、それを楽しみにしている利用者も多いはずです。  この地域には「○○」と「××」という二つの集落があり、隣県へ抜ける国道からそれぞれの集落へ抜ける道が細かい枝のように分岐していました。この国道は21世紀になってから開通したもので、トンネルや高架化されたとても広い道です。  途中、現在は使われていない旧道と何度も交差します。おばあちゃんの話によると、旧道は酷い峠道で隣県まで行くのに何時間もかかったようでした。新道のバイパスができてからは旧道を使う人はほとんどいなくなったそうですが、今でも整備されているのか旧道の路面は比較的整備されています。 「こんなにいい道があるのに、旧道を使う人なんているんですか?」  ふと気になったので、僕はおばあちゃんにそのことを尋ねてみました。
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