越境

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「『△△』という県境の集落にはね、こちら側からは旧道でしかいけないのよ。若い移住者も含め、何人か住んでいるらしいわ。でもみんな隣の県へ出かけるみたいでね。それにうちらと違って車を運転できるから、おたくのお世話になることはないのだろうけど」 「なるほど。そうなんですね」  僕は旧道との分岐を横目に、おばあちゃんの話に納得しました。あとで調べてみると△△という集落は確かに隣県との県境にありました。 「ご苦労さま。ありがとうね」 『目的地です。運転、お疲れ様でした』  依頼者をのせて目的地へ着くと、自動音声でスマートフォンからそう流れます。  僕は町までおばあちゃんを送り届けるとそのままコンビニに寄り、次の依頼が来るのを待っていました。一日4、5件依頼があればいいほうで、それ以外の時間はコンビニの駐車場でスマホゲームをして過ごすことが多かったです。同じ仕事をしている戸田さんという20代後半の男性とも、ここで知り合いました。
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