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◆◇◆
その後はおよそ普段しているのと近い事をした。ストレッチは入念に……と言っても、僕の身体はまだカチンコチンだったけれど。
自転車を漕いで、腹筋を鍛える運動をして、また少し自転車を漕いで。程よく疲れたくらいで休憩があって、紅茶とクッキーを食べた。おからのクッキーらしいけれど、普通に美味しかった。
そして今、僕は箕輪さんにマッサージをされている。
なんでも箕輪さんは疲労回復のオイルマッサージの資格も取りたいそうで練習しているそうだ。シャワールームの少し手前にはリラックスできるマッサージ用のベッドもあり、僕はそこで手の平を揉まれている。
「うわぁ……気持ちいい」
「それはよかったです」
オイルのいい匂いに、温かな手で優しく解されていく手。なんだかポカポカしてくる。
「相沢さんの手、可愛いですね」
「え! あの、そうですか?」
実はこれもコンプレックス。僕の手は小さくてぽちゃぽちゃしている。太っているというか、手の平が厚い。そして指があまり長くない。
その指の間を丁寧に解されていると、不意にゾクッとした。なんというか……リラックスとは違う気持ちよさがあった。
「可愛いです。柔らかくて、温かくて、俺まで癒やされる感じです」
「僕、この手が嫌いなんです。男らしくなくて。小学生の頃にバカにされたし」
「そうなんですか? 勿体ない、こんなに可愛くて気持ちいい手なのに」
そう言って指の先を優しい力で摘まんで解されると更に気持ち良くなってくる。すごくいい。
「次はうつ伏せになってください。肩と腰、後は足もやりましょう」
「いいんですか?」
「勿論です」
言われるままに僕はうつ伏せになる。実は今、僕はパンツだけの状態だったりする。この後直ぐにシャワーの予定だ。
大きくてしっかりした手が僕の肩をもみほぐしていく。ぽちゃっとした背中だと思うと恥ずかしいけれど、そんなのどうでもいいくらい気持ちいい。
「凝ってますね。やっぱり大変ですか?」
「んっ……そんな事はないですが、肩は凝ります。でも……ふぁぁ……気持ちいいですぅ」
変な声が出てしまうくらいには気持ちいい。マッサージにはまる女の人、気持ちが分かった。
「……相沢さんの背中、俺も触っていて気持ちいいですよ」
「え、そうですか? 正直恥ずかしいです、こんなぽちゃぽちゃした背中で」
「それがいいと言いますか……」
少しだけ振り返ると、箕輪さんは少し赤くなっている。恥ずかしそうに。
「俺、自分は鍛えるのが好きなんですが触るのは、このくらい脂肪がついた柔らかい身体の方が好きで」
「え!」
「あの、気持ち悪いですよね! すみません、真面目にやります」
それって……触りたいってことだろうか? こんなだらしない身体を?
大きな手が腰を揉みほぐす。それはとても気持ちがよくて声が出てしまう。ヌルヌルで、押し込まれたり撫でられたりしながらで、なんだか温まってもきてやっぱり気持ちがいい。
「足もやりますね」
「えっ。あっ、はぁ……っ」
足の付け根辺りから下に向かって挟むようにして強く解されるのが気持ちいい。それに、太股の内側がよく分からないけれどゾクゾクする。思わず尻に力が入ってしまう。
ダメだ、これはマッサージなんだ。それで性的に気持ち良くなるなんてキモいだろうし迷惑だし。
我慢するけれど敏感な部分を撫でられるとやっぱり反応はしてしまって、前が硬くなっていく。ご無沙汰過ぎるのもあると思う。そして、触れている場所も悪い。後ろの孔がヒクヒクする。こんなんじゃ、僕がアナニー好きだってバレる!
「では今度、お腹の方をします。これ、脂肪燃焼にいいらしいですよ」
「え!」
今正面はダメだ! 思ったけれど箕輪さん、もの凄く簡単に僕の身体をひっくり返す。そして恥ずかしいくらいに反応している僕を見て、動きを止めた。
「あの、これは、あの!」
僕は泣きそうだった。恥ずかしいのもあるし、知られてはいけない感情の一部を知られてしまった気分だった。
これが怖いんだ。僕はきっと箕輪さんの優しさとかけっこう好きで、こうして接していられればいいと思ってる。でも知られたらそんな簡単にはいかない。拒まれたら、辛い。
思ったら涙が出てきた。思わず手で前を隠した僕に、箕輪さんは男の顔をしてみせた。
「気持ち良かったんですね」
「あの、これは! ひっ!」
「こちらも、俺がマッサージしてもいいですか?」
僕の手の更に上から、大きくてゴツゴツした箕輪さんの手が触れる。それはオナニーでは感じられない甘い痺れで、僕の手は簡単に取り払われてしまう。
ゆっくりとパンツが下ろされ、人様に見せた事のない部分が露わになっていく。まだ半分くらいだからほんの少し皮を被っている部分。これも見せたくないものだ。
「可愛いです、相沢さん。恥ずかしがり屋なんですね」
「あっ」
「痛くはありませんか?」
「痛くないですが……恥ずかしいです」
実はこれだけじゃないのだ、恥ずかしいのは。
「乳首も陥没乳首ですね」
「……です」
これも悩みだ。僕はどこまで引っ込んでるんだよ。だから温泉とかも恥ずかしくて入れないんだ。
でも、箕輪さんは顔を赤くしている。そしてなんだか嬉しそうだ。
「では、マッサージしていきます。素直に気持ち良くなってください」
「え! あっ、はぁ……やっ、あぁぁ」
大きな手が僕を包み込んでゆっくり丁寧に上下している。オイルもあってヌルヌルで、僕は大きく仰け反ってしまった。こんなに気持ちいいなんて知らなかったから。こんな……前だけで意識飛びそうなくらいなんて普段感じないから。
「少し剥きますから、痛かったら言ってくださいね」
「はぁ、はひぃ」
まだ根元のほうで皮を余らせている部分をオイルを絡めて丁寧に剥かれていく。ほんの少しピリリとしたけれどそれは一瞬で、次にはそれ以上の快楽が走った。
「あっ、もっ……気持ちいぃのダメです。僕……イッちゃうぅ」
「構いませんよ」
「やっ、ダメです。見られるの恥ずかしい、見ないでぇ」
でももう出したい。腹の底からせり上がるような感覚はイク時と同じだ。いや、もっと気持ちいい。しかも他人の手で、見られながらなんて。恥ずかしいのに興奮してしまう。
「いいんですよ、相沢さん。イッてください、俺の手で」
「やっ、あっ、ふっ……ふぁぁ! イッ……んぁぁ!」
少し早く、敏感なカリの部分を扱かれた僕はあっけなくイッた。勢いよく散った白濁が腹の上に散っている。腰がまだビクビクしてゆるゆる動いてしまっている。頭の中はぼんやりだ。
「濃いですね。自分でしていませんか?」
「あっ……たま、に」
「適度に抜かないと」
何でもなくそう言われて、僕はただ頷いた。まだ気持ち良くて腰の奥が痺れてる。他人の手って、こんなに気持ちいいものなの? こんなの知ったらもう、自分でしても気持ち良くなれないんじゃないかな?
呆けた僕はもう考える事はしないまま、箕輪さんに綺麗にされて食事を出され、気づいたら帰路についていた。
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