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◆◇◆
びっくりするくらい、出た。僕はぐったりしたままお風呂にお姫様抱っこで移されて、綺麗に洗われて、現在箕輪さんの腕の中でぬるめのお湯に浸かっている。
……箕輪さん、まだ元気だな。
「……すいません」
「え?」
「襲ってしまいました」
「え? ……あ! いや、あの、これは!」
そうだ、これって襲われた事に……なるの、かな? 僕は拒まなかったし、流された。それにどっちかと言うと申し訳ない。若くも無い僕のぷにぷにボディーをお見せすることになって。しかも仮性包茎の陥没乳首ってどうしたらいいの? 人によっては汚物だよ? お金払うとしたら僕の方だけど。
「……どうしても、我慢できませんでした」
「え?」
「寂しそうにされるの、我慢できなくて。そんな辛そうな顔してほしくなくて、襲いました。すみません」
「あの、僕は拒まなかったと思うし。それに、嫌じゃないですから」
本当は凄く嬉しい。まさかこんな僕が誰かと肌を重ねるなんて思ってもみなかったんだ。なんならこのまま処女もらって欲しいくらいだし。
「僕よりも、箕輪さんはよかったんですか? こんなの相手にして」
「それ、嫌な言い方です。こんなのって言わないで下さい。次言ったら噛みつきます」
「うぇえ!」
噛みつくの! 痛い……けど……それって、マーキングってやつじゃ……?
思ったら恥ずかしくなって顔がもの凄く熱くなった。そんな僕の顔を箕輪さんが覗き込んでいる……と、思う。だって眼鏡してないから!
「俺、ゲイなんですよ」
「え!」
「多分ですけど、相沢さんもですよね?」
「あの、どうしてそれ……」
「だって、俺の事もの凄く見てましたから。凄く色っぽい顔で」
「色! そんなこと」
「ありませんか?」
「…………あります」
バレてた。そうなるともの凄く恥ずかしい。
……え? でもそれなら、分かっててあんなに親身にしてくれてたってこと?
マジマジと見上げた僕を、箕輪さんが見ていた。
「凄く好みだったんです。可愛いなって。ただ、途中までは頑張ってトレーナーでいようと思いました。進展させるにも順序とかあるし。なのに相沢さん、もの凄くガードが緩いから俺、どうしようもなくなって」
「そんなにですか?」
「無自覚ですよね。でも、俺に相談してきた時がもうダメでした。可愛くて正直あのままどうにかしたいくらいでした。初心そうだからこのまま持ち帰ろうかと思うくらいでしたよ」
「そんなに!」
確かにあの一件は色々と弱ってしまっていた。でも、そんなに……僕が、可愛いって。
頬に手が触れる。ほんの少し上向かされるその先に、ぼんやりと彼がいることが分かる。もっと近づいたら見えるのに。
「心配になります。個人レッスンなんて怪しいのにホイホイついてくるし。無防備だし。普通、マッサージでちんこ触りませんからね」
「わっ、分かってますよ! だから、あの……どうしてかなって、思ってみたりもして」
「そんなの、好意があるからに決まっているでしょ。好きでもない相手のちんこ握りませんよ」
「……です、よね」
思い出したらまた恥ずかしくなってきた。そしてお尻の下にあるそれ、どんどん硬くなってませんかね?
どうしよう、またエッチな気分になってきた。そしてもう両思いだって分かっている。
「今日だって賭けみたいなものです。これで俺に好意がなかったら、俺強姦魔ですよ? 流石に仕事クビになります」
「そんな! あの、僕は箕輪さんの事が好きです! パンフレット見て一目惚れで。でも知られないまま、少し見ていられたらいいと思ったくらいだったから、こんな……予想外で」
思わず立ち上がってしまった。そうしたら流石に見下ろす形になった。それでも、箕輪さんは僕を見上げて笑っているように思えた。
「嬉しいです。俺がいたから、来てくれたんですね」
「……です」
「俺と、こういう関係になるのは嫌ですか?」
「……嫌じゃ、ないです」
「俺は和俊の事が好きだよ。守ってあげたいし、力になりたい。寂しい顔なんてさせない。もっと、嬉しそうに笑って」
胸の辺りがヒクヒクする。こみ上げる苦しさは泣きたい時のそれだけれど、悲しいんじゃない。嬉しくて、びっくりして、まだ疑って……でも、受け入れて欲しくて必死なんだ。
「僕、でいいですか?」
「勿論」
「僕、童貞処女でこれが初めてのお付き合いで色々分からない面倒な奴ですけど、いいんですか?」
「え、経験ないんですか!」
「ありません! 自分では少し……します、けど……」
これ、アナニーの事も言わなきゃダメなパターンなんだろうか。恥ずかしいけれど。
見たら箕輪さんもなんか、目線外している。もしかして面倒は嫌だとか、そういうことだろうか!
「あの、でも自分ではしてます! だから面倒は!」
「え! あの、ちがくて! その……たまらなく嬉しいと、思って。俺が全部、初めてなんだって思ったら、その……」
「…………んっ!」
え、嬉しい、の?
感じたらもの凄く恥ずかしくなってしまった。32歳でこれって面倒くさいと思っていたから、もうどうしようかと思っていたら。
しばらく互いに言葉がなかった。そのうちに熱くなって……あっ、なんかフラフラ……。
「相沢さん!」
「ふへぇぇ」
目の前が回る。あっ、知ってる。これ、逆上せたんだ。
僕を抱き留めた箕輪さんがやっぱりお姫様抱っこで運んでくれる。僕は情けないのと嬉しいのと幸せなのが色々混ざり合って、泣きながら笑うっていう妙な情緒になってしまった。
でも、嬉しかった。僕は今日初めて、特別な人ができたんだ。
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