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ヘリから降りると艦橋に通された。艦長が松田に言う。
「音響データは取れたか?」
「はっ! ここに」
松田があの機械を大きなヘッドセットを付けた乗員に手渡す。ソナー監視員が大声で言う。
「ソナーに感あり! 目標3。音響パターン一致を確認。火器管制システムに転送」
艦長が大声で指示する。
「VLSハッチ開け。対潜水艦ミサイル、ひと番から3番まで用意」
砲雷長が言う。
「発射用意完了」
「ミサイル発射!」
艦橋の手前からオレンジ色の炎が吹きあがり、3本のミサイルが垂直に飛び立つ。一定の高度まで上がったミサイルは空中で向きを変え、横方向へ飛ぶ。
海面近くでミサイルの先端が分離し、水中に突入。3本の音響探知魚雷になって、3体の巨大アンモナイトに突進して行く。
海面の3か所から巨大な水柱が上がり、青い液体がまき散らされた。魚雷は3本とも命中した印だった。
護衛艦が那覇港へ戻る途中で夜が明け、まばゆい朝日が甲板を照らした。海を見つめ続ける渡の横に宮下が並んだ。
「先生、何かまだ心配な事でも?」
渡は頭を振ってかすかに笑った。
「いや、そういうわけじゃない。ただ、温暖化、海洋汚染、その他もろもろの影響で地球の生態系が狂い始めているのか、と思ってな」
「確かに、またどこかで別な何かが起きるかもしれませんね」
「ひょっとしたら我々は、絶滅前夜の時代に生きているのかもしれんな」
「は?」
宮下は首をひねった。
「何をおっしゃっているんですか、先生。巨大アンモナイトは絶滅などしていませんでした。まだ世界のどこかに棲息しているかも」
「絶滅するのは、やつらが、じゃない」
渡が宮下に顔を向ける。笑っていたが、その目は笑っていなかった。
「我々人類が、だ」
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