絶滅前夜

7/7
前へ
/7ページ
次へ
 ヘリから降りると艦橋に通された。艦長が松田に言う。 「音響データは取れたか?」 「はっ! ここに」  松田があの機械を大きなヘッドセットを付けた乗員に手渡す。ソナー監視員が大声で言う。 「ソナーに感あり! 目標3。音響パターン一致を確認。火器管制システムに転送」  艦長が大声で指示する。 「VLSハッチ開け。対潜水艦ミサイル、ひと番から3番まで用意」  砲雷長が言う。 「発射用意完了」 「ミサイル発射!」  艦橋の手前からオレンジ色の炎が吹きあがり、3本のミサイルが垂直に飛び立つ。一定の高度まで上がったミサイルは空中で向きを変え、横方向へ飛ぶ。  海面近くでミサイルの先端が分離し、水中に突入。3本の音響探知魚雷になって、3体の巨大アンモナイトに突進して行く。  海面の3か所から巨大な水柱が上がり、青い液体がまき散らされた。魚雷は3本とも命中した印だった。  護衛艦が那覇港へ戻る途中で夜が明け、まばゆい朝日が甲板を照らした。海を見つめ続ける渡の横に宮下が並んだ。 「先生、何かまだ心配な事でも?」  渡は頭を振ってかすかに笑った。 「いや、そういうわけじゃない。ただ、温暖化、海洋汚染、その他もろもろの影響で地球の生態系が狂い始めているのか、と思ってな」 「確かに、またどこかで別な何かが起きるかもしれませんね」 「ひょっとしたら我々は、絶滅前夜の時代に生きているのかもしれんな」 「は?」  宮下は首をひねった。 「何をおっしゃっているんですか、先生。巨大アンモナイトは絶滅などしていませんでした。まだ世界のどこかに棲息しているかも」 「絶滅するのは、やつらが、じゃない」  渡が宮下に顔を向ける。笑っていたが、その目は笑っていなかった。 「我々人類が、だ」
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加