お迎えの出来る距離

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 ――お迎え? 『宇宙は初めて? じゃあ、水のには気をつけてね』  黒髪に黒マスク。黒いつなぎ、黒いジャケット。確か手袋も黒だった。宙港で出会った黒づくめの青年はそこだけ素を見せているような綺麗な目を細め、人懐こい笑顔を見せた。  気をつけるようなもの? ヨセフは思う。  目の前に水が迫る。いや、迫るのは水ではない。水に向かっているのはヨセフの方だ。  おおよそ球形の綺麗な水だ。日頃から気にしている垂れ目に白人種の肌色を通り越して健康的とは言いがたい青白くさえ見える肌、ブロンドの落ち着かない癖っ毛が歪んだ球面に歪んで映る。水は表面張力で揺れながら中空に浮いている。  その水が迫り、いや、その水に迫り。  の意味を察する前に、ヨセフは顔を突っ込んだ。
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