act.2 霹靂 

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 そのまま数日が過ぎた。  頭部に挫創のある俺は相変わらず寝たきりだ。最初の頃は頭痛が余りにも酷くて少しも身体が動かせなかった、もう寝てるだけでやっとの状態だった。  食事の出来ない俺には点滴が繋がれ、日に一度は看護師が来て後頭部や身体のあちこちの傷を治療してくれたけど、これがもう沁みて沁みて。  特に頭の治療はとんでもなく痛かった。髪も傷の周りを切られてデカい500円ハゲになってると森さんは笑うし。 「まぁ男の子だからね、本当は治療しやすいように全部切ったほうが良かったんだけど」  あとちょっとでツルッと丸刈りだったらしい、それは勘弁して欲しい。 「傷は残ると思うよ、バットが折れるほど殴られているのによく平気で動いていたわね。アドレナリンってすごいわ」  森さんはそう言っていた。あの時に怒りの感情で今井の家に乗り込んだ俺は、そのアドレナリンのせいで痛みも感じずに大暴れ出来たんだろうと。 「傷はともかく後遺症が残らなければ良いけど」  それは仕方ないと思う。  丸刈りの話をしたら、それを想像した時任さんに吹かれた。    そしてここは病院だから、死んでも尚ここに居続ける厄介な連中が多くてそれが参った。  部屋の中にいきなり現れて俺をただじっと見てるじいさんや、血だらけで半分崩れた顔に指さされて笑われたり、バケツで水をブッかけられた幻を見せられた時はさすがにムカついたけど。  そいつらは俺をただ脅かしたいやつだから、無視を決め込んでたらそのうち出なくなった。母ちゃんが教えてくれた通りだ。 『ああいう輩はいちいち相手にしない、無視に限る』  本当は出なくなった訳でなく、俺がだけだと気付くのはもう少し後の事だ。    俺の霊感体質はこの時期にかなり鍛えられた。  部屋の中を漂う目障りなオーブ(浮遊霊魂?)を自分の力で蹴散らせる様になったのもこの頃だ。  寝てる以外他にやることが無かったから、その集中の仕方を色々覚えた。ただ、オーブは赤っぽく視えるヤツがヤバイと母ちゃんに教わっていた、狙うのはそれだけ。  何のことはない、何かに集中していないと悠里の事を思い出してしまうからだ。要するに俺は未だに逃げ回っているのと同じだった。  泣いていないだろうか。  心細くないだろうか。  時任さんのおかげで、悠里は時任さんの家で安全に過ごさせてもらってるらしいけど。  もう泣いていないって本当なのかな。  母ちゃんを亡くしたばかりなのに、俺はもう悠里の傍に居てやる事も、抱きしめてやることも出来ないんだ。  あいつを殴りに行ったことは後悔しない、しちゃいけないと…  俺は必死になって自分に言い聞かせていた。  それがその時の自分にできる、唯一の自己防衛だったのかも知れない。   
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