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次の取り調べはいつ来るのかなと思っていたら、医者から暫く絶対安静の指示が出たと時任さんが教えてくれた。どうやら頭蓋骨に見えないヒビが入っている疑いがあるらしい。
あの後、俺の怪我の具合を更に細かく記録した診断書が警察に提出されたという。だから取り調べに来ないんだ。
もちろん家族の話では、日常生活にも支障をきたすほど四肢に力が入らない筈の今井の息子だ。俺にそんな傷を負わせられること自体が変だと、署内でも診断結果を疑う者も現れたらしい。
と、同時に今井の息子が本当にそんな障害があるのかと疑う者も現れた。
あの家族にしたら、今更余計なことをしてしてくれたと俺に対する憎しみが一層深くなったことだろう。
入院して二週間も経った頃には、俺の頭痛もようやくマシになってきた。なんとか食事も採れるようになった。
「悠里が施設に行くと言ってる。俺はこのまま我が家で預かりでも良いかと思っているんだが、悠里が自分から行くとな。龍矢がいつ帰って来るのかわからないのに、うちにそんな迷惑は掛けられないとさ。子供なんだからそんな気を使わなくていいのにな」
時任さんにその事を聞いたのもその頃だ、悠里は市内にある児童相談所も兼ねた保護施設へ行くというのだ。
まだ調書もろくに取れないこの状況では、確かに先の見通しが立たないだろう。
時任さんからは元気だと聞いているけど、そんな施設とかに行って見知らぬ他人と暮らすなんて、悠里は大丈夫なんだろうか。
いつも俺の背中に隠れてるだけと思っていた俺の妹が。
この時、俺は初めて自分のやったことに後悔し始めていた。
悠里を自分の手で護ってやれなくなっているこの現実を、やっと認め始めていた。
情けない…悔しい…
ちょっと考えたら分かった筈なのに。
どうして俺はこんな後先考えない、バカなガキなんだ…!!
「龍矢」
天井を見ていた筈なのに、視界が滲んで何も見えなくなった。
いつの間にか俺は泣いていた。
「悔しいのか」
喉が詰まってすぐには返事が出来なかった。返事の代わりに大きく頷いて、やっと小さな声で「はい」と言えた。
「その気持ちを忘れるなよ。これからお前が生きていく為に必要な物だ」
「はい…!」
もう、決して忘れない。
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